歯の治療全般
歯科で使う麻酔の種類や特徴って?~よくある疑問・質問にも回答

歯科治療では、しばしば麻酔の注射をして治療を行います。安全性の高い処置ではあるものの、どのような薬が使われているのか、副作用はないのかなど、気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、 歯科治療で用いられる麻酔の種類や痛みを取る仕組み、副作用、よくあるご質問についてご紹介します。安心して治療に臨むためにも、歯科麻酔について理解を深めていきましょう。
歯科治療で使う麻酔はどうやって痛みを取るの?

歯科治療では、虫歯の治療や抜歯など、痛みを伴う処置が少なくありません。そこで活躍するのが局所麻酔です。
私たちの体は、痛みを感じると神経を通じて脳にその信号を送ります。歯科で使われる麻酔薬は、神経の伝達経路を一時的にブロックする働きを持っています。それにより、痛みの信号が脳に届かないようにしているのです。
歯科治療で用いられる麻酔の種類
では、歯科治療で使われる麻酔について、それぞれの特徴と使い分けについて見ていきましょう。
上で説明した局所麻酔に分類されるのが、表面麻酔・浸潤麻酔・伝達麻酔の3つです。それ以外にも精神鎮静法(治療への恐怖心や不安を緩和する処置)に分類される笑気吸入や静脈内鎮静法(セデーション、IVS)といったものもあります。
表面麻酔

局所麻酔のひとつである表面麻酔は、歯茎の表面にジェルやスプレー、シール状の麻酔薬を塗布・貼付することで、粘膜表面を麻酔する方法です。
注射麻酔の痛みを軽減する前処置として使用されます。塗布してから約3分程度で効き始め、10分ほど効果が持続します。
浸潤麻酔(しんじゅんますい)

浸潤麻酔は、歯科治療で最も使用される局所麻酔です。治療する歯の近くの歯茎に麻酔薬を注射し、周囲の組織に麻酔薬を浸透させることで、その部分の痛みをブロックします。皆さんが想像する麻酔といえばこの浸潤麻酔になるでしょう。
浸潤麻酔にも様々な種類がありますので、薬剤名や特徴について、分かりやすく一覧にしておきます。
| 麻酔薬名 | 効果の持続時間(個人差あり) | 特徴 |
|---|---|---|
| スキャンドネスト® | 約30分 | 血管収縮薬が配合されていないため、麻酔薬が早く拡散し、効果が短時間で切れます。高血圧や心臓疾患のある方への使用に適しています。 |
| シタネスト・オクタプレシン® | 1〜2時間 | 血管収縮薬の配合量が控えめで、中程度の持続時間です。 |
| キシロカイン®(リドカイン) | 2〜3時間 | 最も広く使用されている歯科麻酔薬です。 |
| オーラ注® | 2〜3時間 | キシロカイン®と同等の効果時間です。 |
| エピリド® | 2〜3時間 | 一般的な歯科治療に幅広く使用されています。 |
| キシレステシンA® | 2〜3時間 | 安定した麻酔効果が得られます。 |
| セプトカイン®(アルチカイン※) | 2〜3時間 | 骨への浸透性が高いのが特徴です。 |
いずれも注射後数分で効果が現れ、治療中の痛みを感じなくなります。効果の持続時間は使用する麻酔薬によって異なりますが、一般的には1〜3時間程度です。ただし、効果時間はあくまで目安であり、個人の体質、治療部位、注射量などによって変化します。
(※)セプトカイン(アルチカイン)は2024年に認可された比較的新しい麻酔薬です。セプトカイン(アルチカイン)についてより詳しく知りたい方は、提携医院である桜新町駅前歯科のアルチカイン~今までよりも効きが早くてしっかり効く新しい麻酔薬のコラムをご参照ください。
伝達麻酔

同じく局所麻酔のひとつである伝達麻酔は、神経の根元の近くに麻酔薬を注射する方法です。
浸潤麻酔よりも広い範囲に麻酔を効かせることができるのが特徴です。下顎の奥歯の治療や、親知らずの抜歯など、浸潤麻酔だけでは効きにくい部位に用いられることが多いのが伝達麻酔です。
効果は4〜6時間と長く続くことがあり、麻酔が効いている間は唇や舌にも痺れが出ることがあります。そのため、治療後は誤って噛まないよう注意が必要です。
笑気吸入鎮静法

ここからは精神鎮静法に分類されるものを紹介しましょう。まず、笑気吸入鎮静法とは、酸素と笑気(亜酸化窒素)を混ぜたガスを鼻から吸入する方法です。
吸入を始めると数分でリラックスした状態になり、治療への不安や恐怖心が和らぎます。ふわふわとした感覚が得られ、時間の経過も短く感じられるのが特徴です。
意識ははっきりとしているため、歯科医師の指示に応じることができ、また、笑気の吸入を止めると数分で通常の状態に戻るため、治療後の日常生活への影響がほとんどありません。
静脈内鎮静法(セデーション、IVS:Intravenous Sedation)

静脈内鎮静法は、点滴で鎮静薬を血管に投与する方法です。笑気吸入鎮静法よりも深いリラックス状態が得られ、半分眠っているような感覚で治療を受けることができます。
治療中の記憶がほとんど残らないため、歯科恐怖症の方や嘔吐反射が強い方にも適しています。インプラント治療など、長時間かかる治療の際にも用いられることが多い方法です。
インプラント治療時の静脈内鎮静法(セデーション、IVS)については、同じく医療法人社団 千仁会のインプラントオフィス大通のインプラント治療で用いる麻酔と鎮静法のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
歯科治療で用いられる麻酔の副作用は?

歯科麻酔は安全性が高く、日常的に行われる処置ですが、まれに以下のような副作用が起こることがあります。
- 一時的に心臓がドキドキする(※)
- 気分が悪くなる
- アレルギー反応が起きる
- しびれが長引く
このような症状が出た場合は、すぐに歯科医師に伝えるようにしましょう。また、過去にこれらの症状が出たことがある方は、必ず事前に歯科医師にお知らせください。
(※)麻酔後に動悸がする症状については、提携医院である町田歯科の麻酔後に動悸がするのはなぜ?のコラムを併せてご参照ください。
歯科麻酔に関するよくある質問
麻酔の種類や特徴について解説してきましたので、ここからは、歯科の麻酔についてよく寄せられるご質問についてお答えしていきましょう。
Q. 妊娠中・授乳中も麻酔してもいいの?

A. 局所麻酔薬はお母さんにも、お腹の赤ちゃんにも通常の使用量であれば、重大な影響を及ぼす可能性は極めて低いとされています(※)。
むしろ、麻酔をしないで痛みを感じる方が、血圧上昇などを引き起こし、かえって母体や胎児に負担がかかる可能性があります。
また、授乳中の麻酔も妊娠中の麻酔と同じく、通常の使用量なら問題になることはありません。
もし、どうしても母乳に移行する可能性が心配になる方は、局所麻酔の注射を受けてから4~5時間くらい授乳を避けるといいでしょう。あるいは、治療前に搾乳しておき、冷蔵庫に保管した母乳を与えるという方法もあります。
(※)妊娠中の歯科治療については、マタニティ歯科の各コラムで解説しておりますので、併せてご参考になさってください。
Q. 刺入時の痛みを抑えるには?

A. 麻酔をすれば痛みなく治療が受けられるものの、麻酔薬を注射する際の痛みが気になる方もいらっしゃいます。
注射針を歯肉に刺すときの痛みを和らげるには、先述の表面麻酔を使用したり、痛点を避けるようにするのが有効です。
お口の中はどこに注射しても等しく痛いのではなく、痛みに敏感な痛点が多いところと、少ないところがあるため、例えば、表側の歯肉など、痛点が少ない箇所から麻酔の注射を始め、徐々に麻酔を効かせたいところに近づけていくようにすると、麻酔の痛みも少なくなります。
Q. 麻酔注入時の痛みを抑えるには?

A. 麻酔薬が組織の間に広がるときにも痛みが生じます。この痛みを抑えるには、電動注射器を使用したり、麻酔薬を温めておくのが有効です。
電動式の注射器は、麻酔薬の注入速度をコントロールできるのが特徴です。一定の速さでゆっくりと注入すると、麻酔薬が浸透するときの痛みを減らすことができるので、麻酔薬の注入時の痛みを抑えられます。
また、麻酔薬を体温程度に温めておくと、注入時の温度差による痛みを和らげることにつながります。麻酔薬は冷暗所に保管しているので、その日の使う分だけ温めておくのも、注入時の痛みを抑える方法のひとつです。
Q. 麻酔後の食事はいつから?

A. 麻酔が効いている間は、唇や頬、舌の感覚が麻痺しています。この状態で食事をすると、知らないうちに頬の内側や舌を噛んでしまったり、熱いものでやけどをしてしまったりする危険があります。
浸潤麻酔後は2〜3時間程度、伝達麻酔後は4〜6時間程度は食事を控えましょう。個人差があるため、唇や頬を軽くつまんで感覚が戻っていることを確認してから食事を始めると安全です。
Q. 麻酔が効きにくいのはなぜ?

A. 麻酔が効きにくいのには、以下のような原因が考えられます。
- 炎症が強い場合
- 緊張している場合
- 体調不良や飲酒・薬の影響
炎症が起きている組織は酸性に傾いており、麻酔薬の効果が弱まってしまいます。また、緊張によって血管が収縮し、麻酔薬が組織に浸透しにくくなることもあります。
ほかに、日常的に鎮痛剤を服用している方や、抗うつ薬を飲んでいる方も注意が必要です。薬の影響で麻酔の効果が弱まることがあるため、麻酔が効かないと感じたら、遠慮せずに歯科医師に伝えましょう。
歯科麻酔について正しく理解して、安心した治療を

歯科治療における麻酔は、表面麻酔や浸潤麻酔、リラックス効果のある鎮静法など、治療内容や症状に合わせてさまざまな種類が使い分けられています。
安全性の高い処置ですが、ごくまれに副作用が出ることや、強い炎症・緊張などが原因で麻酔が効きにくくなる場合があることには注意が必要です。
しかし、麻酔の仕組みや注意点を正しく理解しておけば、必要以上に怖がることはありません。妊娠中や授乳中であっても、通常の使用量であれば母子ともに問題なく治療を受けることができます。
各分野に精通した専門スタッフがしっかりとお話を伺い、痛みに最大限配慮した治療を行いますので、「麻酔の注射が怖い」「過去の治療で痛い思いをした」という方も、札幌駅北口すぐのポラリス歯科・矯正歯科へお気軽にご相談ください。





