部分入れ歯の種類と特徴

部分入れ歯の種類と特徴
 

皆さんは、入れ歯と聞いてどんな印象をお持ちでしょうか。もし年配のご親戚がいらっしゃる方なら、実物を目にしたこともあるかもしれませんね。

 

たしかに、年齢が高くなるにつれ、入れ歯を使用する人は多くなります。厚生労働省の歯科疾患実態調査からも分かるとおり、40代後半の人では入れ歯の使用者は1割にも届きませんが、75歳以上の後期高齢者になると、入れ歯の使用者は3~4割にもなります。

年齢ごとの入れ歯の使用者率

入れ歯は有床義歯(ゆうしょうぎし)の一つ

虫歯や歯周病、あるいはケガや事故などにより、歯を失ってしまった場合、歯科医院で義歯(ぎし)をつけることがあります。義歯とは、歯を失った箇所を補う人工の歯の総称です。

 

この義歯には、架工義歯(かこうぎし)、有床義歯(ゆうしょうぎし)、インプラントなどがあります。架工義歯は、いわゆるブリッジのことです。歯を失ってしまった部分(欠損歯:けっそんし)の両側の歯を削り、人工の歯を被せ物としてつなげます。

 

有床義歯は、口の中の粘膜にフィットする土台(これを「床」と呼びます)に人工の歯を配置したものをいいます。インプラントについては後述しますが、ポラリス歯科・矯正歯科の診療内容でも詳しくご説明していますので、併せてご参照ください。

 

上の説明からもイメージできるかと思いますが、入れ歯は有床義歯の一種で、失った歯とその周囲を補うための装置です。細かく分けると、入れ歯には部分入れ歯(部分床義歯:ぶぶんしょうぎし)と総入れ歯(総義歯:そうぎし)の2種類があり、さらに保険適用で作る入れ歯と、自費で作る入れ歯があります。

 

今回は、使用者も多い部分入れ歯について、その材質や特徴、作る際の費用などについてお話ししましょう。

保険適用の部分入れ歯

保険適用の部分入れ歯

保険適用の部分入れ歯の材質と構造

保険で作る部分入れ歯は、大きくは、(しょう)と呼ばれる赤い土台、人工の歯金属の留め金から構成されています。各々について説明していきましょう。

床(しょう)

床の材料は、アクリルレジンスルフォン樹脂というプラスチックで作ります。どちらのプラスチックも色はピンク色で、歯茎に似せて作ります。

 

アクリルレジンは、見た目の違和感はないのですが、厚みの違和感は若干あります。スルフォン樹脂は、アクリルレジンよりも耐熱性や耐燃性に優れていて壊れにくいため、薄く加工することができるのですが、修理が難しいというデメリットもあります。

人口の歯

人工の歯の素材は、アクリルレジン硬質レジン陶歯(とうし:陶材、セラミック系材料)の3種類から選びます。色は自然な白色で、実際の歯のような色合いになるよう製作します。

 

噛み合わせの調整のしやすさから、アクリルレジンや硬質レジンが候補に挙がるのですが、近年では、耐久性から硬質レジンを使用するケースが多くなりました。アクリルレジンは、歯がかなり小さくなる時に限られるようになってきています。

 

陶歯は、レジン系の素材より硬く、摩耗に強いという特徴があります。また、変色せず、色合いや透明度も自然の歯に近いので、審美性を重視する方におすすめです。

留め金具

二腕鉤
 

留め金具についても、様々な大きさや形、材質があります。間接維持装置と呼ばれる小さなものから、二腕鉤(にわんこう)、双子鉤(そうしこう)などの大きなものまで、そのサイズは多岐にわたります。

 

上の写真は二腕鉤で、エーカースクラスプとも呼ばれ、1つの金具を1つの歯に掛けるタイプです(クラスプは留め金具の意味です)。双子鉤はダブルエーカースクラスプと呼ばれ、1つの金具を2つの歯に掛けるタイプを指します。双子鉤の写真は、厚生労働省のページに実例がありますので、興味のある方はご参照ください。

 

また、金属の線を曲げて加工して作られる、針金のように細い線鉤(せんこう:ワイヤークラスプ)や、硬く太い鋳造鉤(ちゅうぞうこう:キャストクラスプ)という分類もあります。前出の二腕鉤や双子鉤は鋳造鉤です。留め金具の素材としては、金銀パラジウム合金、コバルトクロム合金、ニッケルクロム合金などが挙げられます。

つなぎ(バー)

離れた入れ歯をつなげるバー
 

離れた入れ歯をつなげる部品をバーといいます。バーも作り方と見た目から、屈曲型や鋳造型に分けられることがあります。こちらも留め金具と同様に、素材は金銀パラジウム合金、コバルトクロム合金、ニッケルクロム合金などから選ばれます。

保険適用の部分入れ歯の特徴

保険適用の部分入れ歯は、適用範囲が広く、ほとんどのケースに使用できます。特定の素材を使用しているものを除き、壊れたり、合わなくなった時の修理もしやすいというのも利点として挙げられます。そして保険適用のため、費用は1,500円くらいから15,000円程度と、無理のない価格になっているのもメリットです。

 

ただし、もちろんメリットばかりではありません。まず、入れ歯を作った後、6ヶ月間は作り直しができません。これを6ヶ月ルールといいます。また、入れ歯の構造上、口内の粘膜に密着し、人工の歯を使用していますので、床の厚さに違和感があったり、温度や味を感じにくくなることがあります。他に、留め金具やつなぎの金属が目立つこともあります。

大切な日々のお手入れ

入れ歯のお手入れ
 

部分入れ歯は、作った後は何もしなくて良いわけではありません。しっかりとしたメンテナンスが必要です。まず基本的に毎食後、きちんと洗浄してください。この際は、入れ歯専用の歯磨き粉やクリーナーを使うと、汚れが落ちやすくなります。

 

お手入れしにくい時は、薬局やドラッグストアで販売されている、専用の液体や錠剤で消毒するのが良いでしょう。また、乾燥を防ぐために、外した後は水中で保管します。そして何より、定期的に歯科医院で部分入れ歯の状態をチェックし、必要に応じて調整を行うのが大切です。

自費適用の部分入れ歯

ここまで、保険適用の部分入れ歯についてお話ししてきました。入れ歯の構造や特徴について、おおよそイメージしやすくなってきたと思いますので、続いては自費で作成する入れ歯についてご説明しましょう。こちらは保険適用のものと比べ、用途に応じて様々な材質とタイプがあるのが特徴です。

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャー
 

デンチャー(Denture)は入れ歯の英訳であり、前述のとおり、クラスプ(Clasp)は留め金具を意味します。つまりノンクラスプデンチャーとは、金属の留め金具をなくした部分入れ歯のことです。床の部分を延ばして、バネのように歯に掛けて安定を図ります。床の素材は、プラスチック製となっています。

 

ノンクラスプデンチャーは、留め金具がなくなり、部分入れ歯が目立たなくなるというメリットがあります。費用は10万円~40万円程度です。

金属床義歯(きんぞくしょうぎし)、メタルデンチャー

金属床義歯、メタルデンチャー
 

保険適用の部分入れ歯についての説明でも述べましたが、プラスチック製の床は、厚みがあり、温度が伝わりづらいことによる違和感もあります。そこで、この床を金属製に変えたものが金属床義歯、メタルデンチャーです。

 

床を金属にすることにより、厚みを薄くでき、温度も感じやすくすることができます。金属床義歯の素材は、金合金、チタニウム合金、コバルトクロム合金などから選ばれます。費用は10万円~80万円程度です。

コンフォート

コンフォートは、ノンクラスプデンチャーに、柔らかいクッションが付いた入れ歯です。歯科医院によっては、ノンクラスプデンチャーと同様の扱いになります。費用は10万円~50万円程度です。

インプラント

インプラント
 

インプラントによる歯の治療はメジャーになり、皆さんも、インプラントという言葉は聞いたことがあるかと思います。骨にインプラントを埋め、部分入れ歯をインプラントに掛けて安定させます。

 

インプラントを埋めることにより、残された歯の本数に関係なく安定を図れます。全てをインプラントで治すよりも、部分入れ歯を組み合わせると、費用を抑えることもできます。ただし、インプラントを埋入するため、顎の骨の中で安定してくるまで、約4ヶ月かかります。費用は30万円~150万円程度です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科では、3次元CTによる詳細な検査を行い、専用の手術室でコンピューターガイドに基づいた精密なインプラント治療を提供いたします。また、50年以上の歴史があり、世界シェアNo.1のインプラントメーカーであるストローマン社のインプラントを使用しますので、安心してご相談いただければと思います。

自費適用の部分入れ歯のお手入れも忘れずに

自費適用の部分入れ歯だからと言って、メンテナンスが不要になるわけではありません。保険適用の部分入れ歯と同じく、お手入れはきちんと行う必要があります。

 

ただし、材質によっては熱湯で性能が変質するものがあります。また、入れ歯の工場指定の消毒液を使用することが推奨されることもあります。これらの点はご注意ください。

部分入れ歯も本来の歯と同様に

部分入れ歯も本来の歯と同様に
 

冒頭で厚生労働省の歯科疾患実態調査のデータを引用しましたが、厚生労働省は日本歯科医師会とともに、8020(ハチマルニイマル)運動を推進しています。8020運動とは、80歳になっても自分の歯を20本以上は保つことを目標とする運動です。

 

歯科疾患実態調査のデータを見ると、幸いなことに、80歳で20本以上の歯が残っている方の割合は増加傾向にあります。しかし急激なスピードで高齢化社会となり、年々お年寄りが増える日本では、やはり入れ歯などの義歯を使用する方の数は多くなっていくのも事実です。

 

お伝えしているように、ポラリス歯科・矯正歯科では、できるだけ患者さんの歯を長く残せる治療を心掛けています。もちろん、ご自身の歯をずっと使えるのが理想ではありますが、様々な理由や加齢に伴い、歯を失うケースもあるでしょう。

 

そのような時、今回お話しした部分入れ歯も、選択肢の一つに入ってくることがあるはずです。もちろんポラリス歯科・矯正歯科では、しっかりと患者さんの声に耳を傾けつつ、口腔内環境を丁寧に検査したうえで、最適な部分入れ歯をご提供いたします。

 

それに加え、定期的なメンテナンスを確実に行うことで、本来の歯と同様に長く、問題なくご使用いただけるようサポートもいたしますので、部分入れ歯をお考えの方は、ポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にお問い合わせください。