小児歯科
ブラックステインとは?

「子どもの歯が、なんだか黒ずんでいるみたい」
「歯茎に沿って茶色い着色が目立つけど、もしかして虫歯?」
お子さんの歯の表面に、線を引いたような黒や茶色の点、あるいは線状の着色を見つけ、驚いている保護者の方もいるでしょう。
ただ、それはブラックステインと呼ばれる着色かもしれません。これは虫歯とは異なるもので、多くの場合、健康への直接的な害はありません。
しかし、色が濃く目立つため、見た目を気にされる方が多いのも事実です。今回はそんなブラックステインについて、原因や対処法などを解説していきます。
ブラックステインについて
冒頭でも触れましたが、ブラックステイン(Black Stain)とは、歯の表面に現れる黒い線状や点状の着色のことです。特に小児に見られることが多く、その見た目から「虫歯ではないか」と心配される保護者の方も少なくありません。
しかし、ブラックステインは、大人になるにつれて自然になくなっていくケースがほとんどです。ブラックステイン自体が虫歯の原因となったり、別の病気を引き起こすことはありません。
ブラックステインの原因

ブラックステインが発生する詳細なメカニズムは、まだ完全には解明されていません。しかし、現在ではお口の中の細菌であるActinomyces(アクチノマイセス)が関わっているという説が有力です。
Actinomyces(アクチノマイセス)は誰のお口の中にもいますが、動きが活発になると硫化水素というガスを発生させます。そして硫化水素と、唾液・血液・食事に含まれる鉄分が化学反応を起こすと、硫化鉄という黒い物質が生成されます。
この硫化鉄が歯の表面に沈着したものが、ブラックステインの正体と考えられているのです。
ブラックステインと虫歯の関係

実はブラックステインがあると、逆に虫歯になりにくい傾向があります。これは、ブラックステインが見られるお子さんの唾液に、以下のような特徴があるためと考えられています。
- カルシウム濃度が高い
- 唾液の緩衝能(酸性に傾いた口内を中性に戻す働き)が高い
唾液に含まれるカルシウムが多いと、虫歯菌が出す酸によって歯の表面が溶かされてしまっても(これを脱灰:だっかい といいます)、それを修復する再石灰化が起こりやすくなります。
そして、唾液の緩衝能が高いということは、飲食物で酸性に傾いたお口の中を、正常な状態に戻す作用も強いということです。そのため、歯が溶けるのを防ぎ、虫歯になりにくい口内環境になるのです。
ブラックステインへの対処法
上述のように、ブラックステインは健康上の問題は少ないとはいえ、やはり見た目は気になるものですよね。では、このブラックステインとどのように向き合っていけば良いのでしょうか?ポイントを挙げておきます。
口腔内の細菌の数を少なくする

ブラックステインの原因菌を含め、お口の中の細菌を完全になくすことはできません。しかし、丁寧なセルフケアで細菌の数を減らし、活動を抑えることは可能です。
食べたらしっかりと歯磨きをする習慣をつけましょう。外出中など、歯磨きが行えない場合は、食べた後に水でうがいをするだけでも、お口の環境を整えられます。お口の中の汚れを少しでも減らし、清潔に保つことで口腔内細菌の増殖を抑えられます。
着色を「落とす」より「防ぐ」意識を持つ

残念ながら、一度付着したブラックステインをご家庭での歯磨きで除去することはできません。硬い歯ブラシでゴシゴシ磨いたり、研磨剤が多く配合された歯磨き粉を使用して無理に落とそうとすると、歯の表面に細かい傷がついてしまう可能性があります。
歯の表面にできた細かな傷は、新たな着色や汚れの温床となるため、かえってブラックステインを付着しやすくし、取り除くのが困難になります。
日々の歯磨きでは、「着色を無理に落とす」のではなく、「歯の表面をツルツルに保ち、新たな付着を防ぐ」ことを意識しましょう。
食べ物・飲み物に気をつける

ブラックステインの原因の一つに鉄分がありますが、鉄分は成長のためにも健康維持のためにも必要な栄養素です。貧血予防などの観点からも重要であり、鉄分を食事で制限する必要は全くありません。
ただし、鉄分を強化した飲料などを日常的に摂取している場合は、飲んだ後に歯磨きやうがいを心がけると、着色のリスクを減らせるでしょう。
歯科医院でクリーニングを受ける

ブラックステインは、歯科医院で行う専用機材によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)で除去できます。
しかし、通常の着色よりも鉄分沈着物は歯面に強固に付着するため、蓄積してしまうことで、除去が難しくなることもあります。
着色を防ぎ、お口全体の健康を保つためにも3ヶ月に1回程度、予防や定期健診を兼ねて、歯科医院でクリーニングを受けましょう。
ブラックステイン予防のためにも、定期的な歯科検診を

お伝えしたように、ブラックステインとは、口腔内細菌と鉄分が反応して生じた歯面の色素沈着です。審美性以外の問題はなく、むしろ虫歯になりにくいと言われています。
ただ、虫歯になりにくいというのはあくまで傾向であり、絶対に虫歯にならないわけではありません。ブラックステインに隠れて虫歯が進行している可能性もゼロではないのです。
着色をきれいにし、同時に隠れた虫歯がないかなどをしっかりとチェックするためにも、定期的に歯科医院を受診し、お口の健康状態を確認してもらうようにしましょう。

ポラリス歯科・矯正歯科では、ブラックステインでお悩みの方に、予防歯科ページでもお伝えしている以下のようなアプローチをご提案しています。
- PMTCによる専門的な着色除去
- 再付着を防ぐためのブラッシング指導
- 歯質を強化するフッ素塗布(※必要に応じて)
- 食生活など、生活習慣に関するアドバイス
お子さんの歯の状態が気になるという方は、医療法人社団 千仁会の専門医たちが、丁寧なカウンセリングを行い、健康な口内環境を維持できるようサポートいたしますので、お気軽に札幌駅すぐそばのポラリス歯科・矯正歯科へご相談ください。
参考文献