放っておくと全身疾患も?歯周病について詳しく解説

放っておくと全身疾患も?歯周病について詳しく解説
 

歯肉炎と歯周炎って何が違うの?のコラムで、歯周病についてお伝えしましたが、歯周病は日本人が歯を失う一番の原因です。実に45歳以上の方の半数が歯周病にかかっており、さらに若い年齢層まで対象を広げると、20歳以上の方の6割以上が歯周病という危機的な状況になっています。

 

実は歯周病は歯や口腔内だけでなく、全身の不調にもつながりかねない病気です。もちろんポラリス歯科・矯正歯科では歯周病治療にも注力していますが、もはや国民病とも言える歯周病には、できることならかからないようにするのが最善と言えるでしょう。

 

今回は、そんな歯周病を防ぎ、歯を長持ちさせ、体の不調や様々な病気の原因を作らないようにするには、どうすれば良いのかを詳しくお伝えします。

そもそも歯周病って?

そもそも歯周病って?
 

歯周病とは、歯と歯茎の間に細菌が入り込み、歯茎や歯を支える骨が溶かされる病気です。歯周病の原因は、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。

 

歯垢は、歯磨きが不十分だと歯と歯茎の間に溜まっていきます。そして歯垢の中の細菌が、毒素を出して歯茎に炎症を引き起こします。

生活習慣病との関係

生活習慣病との関係
 

生活習慣病は、食事・運動・睡眠などの生活習慣が原因で起こる病気です。高血圧・高脂血症・肥満・メタボリックシンドロームなどであり、皆さんもよく耳にするかもしれませんね。

 

これらの生活習慣病は、血管や内臓などの器官にダメージを与え、やがて心臓病・脳卒中・糖尿病などの重篤な病気を引き起こします。

 

実は生活習慣病は歯周病の進行を早めたり、治療の効果を低下させたりします。生活習慣病と歯周病は、相互に影響を与える関係にあるため、予防することが何より大切なのです。

歯周病のリスク要因は?

先ほど歯周病の原因は歯垢(プラーク)であり、歯磨きなどのお口のケアが不十分だと、歯垢が溜まりやすくなるとお伝えしました。つまり、口内環境が不衛生になると、歯周病にかかるリスクが高まるのです。

 

さらに以下のようなことがあると、歯周病がもっと進行しやすくなってしまいます。注意してください。

喫煙

喫煙
 

喫煙は、歯周病のリスクを高めるだけでなく、口の中の細菌のバランスを崩します。歯周ポケットが深くなりやすいため、歯垢も溜まりやすく、さらに口内の治癒力が低下します。

食生活

食生活
 

食生活が偏っていると、栄養不足や免疫力低下につながります。甘いものや粘着性の高い食べ物は、歯垢が溜まりやすくなるので、摂り過ぎには注意しましょう。

ストレス

ストレス
 

ストレスは、免疫力・抵抗力を低下させ、歯周病の原因になります。ストレスを感じると、唾液分泌量が減少し、口の中が乾きやすくなります。唾液には細菌を抑制する作用があるため、唾液分泌量が減ると、細菌が増えやすくなってしまいます。

基礎疾患

基礎疾患として代表的なものは糖尿病です。血糖値が高いと、血管障害や免疫力低下を引き起こし、細菌感染に対する抵抗力が弱まります。

噛み合わせ

噛み合わせが悪いと、歯にかかる負担が偏ります。その結果、歯周組織に炎症が起こりやすくなります。また、歯の詰め物や被せ物が合っていない場合は、歯周ポケットに食べ物が詰まりやすくなり、プラークの温床になってしまいます。

歯肉炎と歯周炎

歯肉炎と歯周炎
 

歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられます。詳しくは歯肉炎と歯周炎って何が違うの?のコラムで解説していますが、こちらでも触れておきましょう。

 

歯肉炎は、歯茎(歯肉)に炎症が生じる病気のことをいいます。歯と歯茎の間の隙間に汚れが溜まることが原因です。歯肉炎を発症すると歯茎が赤く腫れた状態になり、炎症が強くなると、歯磨きなどの刺激で歯茎から出血したり、口臭が気になるようにもなってきます。

歯の構造

歯周炎は、歯茎に炎症が生じる歯肉炎がさらに悪化し、歯を支える骨である歯槽骨(しそうこつ)や歯根膜(しこんまく)、セメント質などの組織が破壊される病気です。

 

歯周炎では、歯茎の腫れや出血、口臭などの症状を引き起こすだけでなく、最終的には歯がぐらついたり、抜け落ちたりする危険性があります。

歯周病が全身疾患につながることも…

歯周病が全身疾患につながることも…
 

歯周病は、口の中だけでなく、全身の健康にも悪影響を与えます。歯周病の原因となる細菌やその毒素、炎症物質が血液に入り込むことで、次のような全身疾患のリスクを高めます。

心臓疾患や脳血管疾患

動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血栓が形成されやすくなります。

糖尿病

インスリンの働きが阻害され、血糖値のコントロールが悪化します。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

歯周病菌が誤って気管や肺に入り込み、感染を引き起こします。特に高齢者では注意が必要です。

メタボリックシンドローム

歯周病菌やその毒素が、内臓脂肪の増加や脂質代謝の異常を引き起こします。

早産や低体重出産

妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、胎児に影響するサイトカインの分泌が増加し、早産や低体重児出産のリスクにつながります。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

歯周病菌やその毒素によって骨の吸収が進んでしまい、骨密度を低下させる可能性があります。結果として、骨折しやすくなったり、歯を支える骨も減少してしまいます。

歯周病のセルフチェック

歯周病のセルフチェック
 

歯周病は、初期段階では自覚症状がないことが多く、気づかないうちに進行してしまう恐れがあります。そのため、歯周病の予防や早期発見には、定期的に歯科医院で検査を受けることが何より大切です。

 

しかし、なかなか歯科医院に行けない時や、ご自分で歯周病かどうか確認したい時は、セルフチェックをすることで、ある程度の判断ができます。皆さんもぜひチェックしてみてください。

歯周病のセルフチェックリスト

  1. 歯茎の色が赤い、どす黒い。
  2. 歯の周りが腫れている。
  3. 歯茎に触れると出血する。
  4. 歯茎から膿が出る。
  5. 口臭が気になる。
  6. 固いものが噛みづらい。
  7. 歯茎が下がって、歯と歯の間に隙間ができている。
  8. 歯が長くなったように感じる。
  9. 歯がぐらつく。
  10. よく食べ物が歯に挟まる。

これらの項目に1つでも当てはまったら、歯周病の恐れがあります。できるだけ早く歯科医院で検査を受けましょう。

歯周病の予防方法

何かと注意が必要な歯周病ですが、その予防はどうするのが効果的なのでしょうか?以下でご説明します 。

きちんとした歯磨き

きちんとした歯磨き
 

当然のことかもしれませんが、やはり一番の基本になるのは歯磨きです。歯周病の原因となる細菌の塊(プラーク)を除去するために、毎日丁寧に歯磨きをしましょう。

 

歯磨きの方法は、歯と歯茎の境目に歯ブラシを当てて、小刻みに動かすのがポイントです。また、デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の間の汚れもしっかり落としましょう。

定期的な歯科受診

ご自身では取り除けない硬化した歯石は、定期的に歯科医院でクリーニングを受けて除去しましょう。歯科医師・歯科衛生士による検査や指導で、自分の口腔内の状態や、正しいケアを知ることもできます。

生活習慣の見直し

生活習慣の見直し
 

喫煙や偏った食生活、ストレスなどは、口腔内の環境を悪化させ、免疫力も低下するため、歯周病のリスクが高まります。

 

「禁煙する」「バランスの良い食事を食べる」「十分な睡眠を取る」。やはりこういったライフスタイルが大切です。ストレスの多い現代社会では、なかなか難しいかもしれませんが、できるだけ健康的な生活を心掛けてください。

 

また、お口の乾燥も細菌の増殖を促しますので、こまめに水分補給をしましょう。それが難しい場合は、口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方のコラムでもお伝えしたように、ご自身に合ったこれらの製品を使い、口内を潤すことも大切です。

食ベ物や飲み物の選択

食べ物や飲み物によっても口腔内の環境は変化します。特に、酸性や甘味の強いものは、プラークや細菌の栄養源となりますので、摂取量や時間帯に注意しましょう。

 

一方で、タンパク質やビタミンC、カルシウムなど、歯茎や骨、コラーゲンの生成に必要な栄養素や、抗酸化作用のある食材や飲料は、歯周組織の健康に役立ちます。

歯周病の治療

歯周病の予防法についてご説明しましたので、続いて実際の治療法をご紹介しましょう。歯周病の治療には、基本的な治療と外科的な治療の2つのアプローチがあります。

歯周基本治療

歯周基本治療
 

歯周基本治療は、歯周病の原因となる細菌の塊である歯垢や歯石を除去し、歯周組織の炎症を軽減する治療です。歯周基本治療には、次のような方法があります。

動機付け

まず最初に歯周病の原因と予防法を理解し、治療への意欲を高めることが大切です。歯科医師や歯科衛生士から、検査結果や口内写真などを見せて、しっかりとご説明します。

正しいセルフケアの習得

患者さんご自身が行える日頃の歯周病ケアとして、正しいブラッシング方法や、適切な歯ブラシの選び方などを指導します。

プロフェッショナルケア

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれる、歯科医院で行う専門的な歯のクリーニングを行います。

 

スケーラーなどの医療器具を使って歯垢や歯石、その他の汚れを除去したり、歯の根の表面を滑らかにするルートプレーニングや、ぐらぐらする歯の噛み合わせの調整も行います。

レーザー治療

必要に応じてレーザーを用いて細菌や毒素を除去したり、出血や腫れを抑えたりする治療も行われます。

歯周外科治療

歯周外科治療
 

歯周外科治療は歯周病が進行し、基本治療では改善が望めない場合に行われる外科手術です。歯周外科治療の目的は、歯周ポケットの除去や減少、歯周組織の再生や形成などです。歯周外科治療には、次のような種類があります。

切除療法

歯肉の形態を修正し、歯周ポケットの減少を目的とする手術です。薬の副作用などで腫れた歯肉を切除する歯肉切除術や、隣接する歯の周囲の歯肉を切開して移動させる歯肉弁根尖側移動術(しにくべんこんせんそくいどうじゅつ)などがあります。

組織付着療法

歯根や歯周ポケットの内部に蓄積した細菌や汚染物質を徹底的に取り除き、歯肉が歯根面にしっかりと付着することを目的とする手術です。キュレット型のスケーラーを用いて、歯根面や歯周ポケットの内側を掻爬(そうは:掻き出すこと)する歯周ポケット掻爬術や、歯肉に切開を加えて一部分を切除する新付着術などがあります。

歯周組織再生療法

失われた骨や組織を再生させることで、健康な歯周組織の獲得を目的とする手術です。自分の骨や骨補填材を移植する骨移植術や、吸収性あるいは非吸収性の膜を使用することで、骨の再生を促す歯周組織再生誘導法などがあります。

歯周病は歯科医院で確実な予防を

セルフケアとプロフェッショナルケアでしっかりと歯周病対策を
 

今回は歯周病について詳しく解説しました。歯周病は歯やお口の中の病気というだけでなく、体全体に影響をもたらす怖い病気でもあるとご理解いただけたでしょうか。

 

そして歯周病は、残念ながら一度かかってしまうと自然治癒することはありません。今回は様々な治療法についてもご説明しましたが、簡単に処置できる方法ばかりではないこともご理解いただけたかと思います。

 

やはり歯周病にかからないのが一番望ましい状態であり、そのためには予防が何よりも大切です。ご自身のケアだけでは、どうしても歯周病対策が不十分になりがちです。だからこそ歯科医院でのプロフェッショナルケアを定期的に受診するようにしてください。

 

ポラリス歯科・矯正歯科では、患者さん一人一人の口内環境をしっかりと検査し、確かな歯周病予防と対策をご提供いたします。歯周病でお悩みの際は、ぜひポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。