乳歯が抜けない原因とその対処法

乳歯の晩期残存(ばんきざんぞん)

乳歯が抜けない原因とその対処法~晩期残存
 

乳歯から永久歯への生え変わりは誰もが経験することです。乳歯は、次に生えてくる永久歯のためのスペースを確保し、正しい位置へと導く「バトンタッチ役」のような重要な役割を担っています。

 

しかし、適切な時期を過ぎても乳歯が抜けずに残ってしまうことがあり、これを乳歯の晩期残存(ばんきざんぞん)と呼びます。

乳歯と永久歯

乳歯から永久歯への生え変わりは、歯の種類によって時期が異なりますが、6~12歳頃にかけて起こるのが一般的です。しかし、この期間を過ぎても乳歯がグラグラする気配がなかったり、永久歯が生えてきているのに乳歯が抜けなかったりする場合は、晩期残存の可能性が考えられるでしょう。

 

このような症状を放置すると、将来の歯並びや噛み合わせに影響を与えることもあるため、注意が必要です。今回はそんな乳歯の晩期残存について解説します。

乳歯が抜けない理由

乳歯が抜けない理由はいくつかあります。ここでは代表的なものを見ていきましょう。

後継永久歯がない(先天欠如)

乳歯が抜けない理由:後継永久歯がない(先天欠如、先天性欠如、先天欠損)
 

後継永久歯とは、乳歯の次に生えてくる永久歯(一般的な永久歯)のことです。通常、後継永久歯が成長し、乳歯の根を少しずつ溶かしながら押し上げることで、乳歯は自然に抜け落ちます。

 

しかし、生まれつきこの後継永久歯が存在しないケースがあります。歯の発育不足・発育過剰で現れる様々な異常とはのコラムでお伝えしたように、これを先天欠如(せんてんけつじょ)や先天性欠如(せんてんせいけつじょ)、先天欠損(せんてんけっそん)といい、この場合、大人になっても乳歯が残ってしまうことがあるのです。

 

日本小児歯科学会の調査(日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査)によれば、先天欠如はおよそ10人に1人のお子さんに見られると報告されており、特に下の前から2番目の歯(側切歯)や、下の前から5番目の歯(第二小臼歯)に比較的多く見られます。

 

残った乳歯は永久歯に比べて歯根(歯の根っこの部分)が短く、寿命も短い傾向があるため、将来的にその部分の歯がなくなる可能性も考慮してケアしていくことが大切です。

後継永久歯の位置のずれ

乳歯が抜けない理由:後継永久歯の位置のずれ
 

乳歯が抜けるためには、後継永久歯が乳歯の真下から正しい方向へ生えてくる必要があります。しかし、何らかの理由で後継永久歯の位置が本来あるべき場所からずれてしまうと、乳歯の根がうまく吸収されません。

 

その結果、乳歯が抜けずに残ってしまったり、永久歯が乳歯の横から斜めに生えてきてしまったりすることがあります。

後継永久歯の成長過程における問題

乳歯が抜けない理由:含歯性嚢胞
 

永久歯が顎の骨の中で成長する過程で、問題が生じることもあります。その一つが含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)です。

 

これは、骨の中に埋まっている永久歯の頭の部分の周りに、液体を溜めた袋状の病変(嚢胞)ができてしまう状態のことをいいます。嚢胞が大きくなると、永久歯が嚢胞に邪魔されて正常な位置に上がってこれなくなり、結果として乳歯の根の吸収が進まず、乳歯が残ってしまうのです。

 

嚢胞の有無や大きさはレントゲンで確認できるので、含歯性嚢胞が考えられる場合は、レントゲン撮影を行います。歯科のレントゲン撮影は安全なものですが、気になる方は、小児歯科のレントゲンって安全なの?のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。

外傷による影響

乳歯が抜けない理由:外傷による影響
 

お子さんが転んだり、どこかに顔をぶつけたりして乳歯に強い衝撃が加わると、その下で成長している永久歯の芽(歯胚:しはい)にダメージが及ぶことがあります。

 

例えば、乳歯が歯ぐきの中にめり込んでしまうような陥入(かんにゅう)というケガの場合、永久歯の歯胚の位置がずれたり、発育が阻害されたりして、将来的に永久歯が正しい位置に生えてこられなくなるケースもあります。

乳歯が抜けない時の対処法

お子さんの乳歯が、適切な時期を過ぎてもなかなか抜けない場合、その原因や永久歯の状態によって対処法は異なります。まずは歯科医院で診断を受け、お子さんの歯の状況を把握することが大切です。

後継永久歯が確認できる場合

後継永久歯がちゃんとあり、嚢胞のような病変がない場合は、しばらく様子を見る
 

後継永久歯がちゃんとあり、嚢胞のような病変がない場合は、しばらく様子を見ることが多くなります。歯が生える時期やスピードには個人差があり、平均的な時期よりも少し遅れることは珍しくありません。

 

後継永久歯があるかどうかは、肉眼では分かりませんが、レントゲン写真を撮影すれば判別できます。乳歯が抜けないようなら、後継永久歯があるかどうかを歯科医院で確認してもらいましょう。

後継永久歯がない場合

後継永久歯がない場合は乳歯を永久歯の代わりとして、可能な限り長く残すようにアプローチする
 

後継永久歯がない場合は、その乳歯を永久歯の代わりとして、可能な限り長く残すようにアプローチすることが多くなります。ただし、この場合は、乳歯の寿命を超えて残すことになります。

 

乳歯は永久歯に比べてエナメル質や象牙質が薄く、歯根も短いため、虫歯歯周病に対する抵抗力が弱い歯です。

 
残った乳歯を長持ちさせるには、歯科医院での定期的なクリーニング・メンテナンス、フッ素塗布やシーラントが重要
 

そのため、残った乳歯を長持ちさせるには、歯科医院での定期的なクリーニング・メンテナンス、フッ素塗布やシーラントといった対処が重要になります。シーラントについては、シーラントによる虫歯予防のコラムで詳しくお話ししておりますので、興味のある方は、併せてご参照ください。

 

また、将来的にその乳歯が虫歯や歯周病などで使えなくなった場合の治療法や、隣の歯を移動させてスペースを閉じる矯正治療についても、早い段階から歯科医師とよく相談しておくことが望ましいでしょう。

後継永久歯の位置がずれている場合

後継永久歯の一部が見えているのに、乳歯がグラグラしていない場合は、歯科医院で抜歯してもらった方が良いでしょう
 

乳歯の内側や外側に後継永久歯の一部が見えているのに、乳歯がグラグラしていない場合は、歯科医院で抜歯してもらった方が良いでしょう。

 

乳歯を抜いた後、永久歯がおさまるための十分なスペースがあれば、唇や舌の力、噛む力などによって永久歯が自然に正しい位置へと誘導されることも期待できます。

 

もし、自然に本来の位置におさまらない場合は、矯正治療を検討する必要があります。

嚢胞ができている場合

嚢胞ができている場合は、それを取り除き、永久歯がスムーズに生えてくるようにするための開窓術という外科的な処置を行うことがあります。
 

後継永久歯の歯冠に含歯性嚢胞が認められる場合は、そのままでは永久歯は生えてくることができません。

 

このようなケースでは、嚢胞を取り除き、永久歯がスムーズに生えてくるようにするための開窓術(かいそうじゅつ)という外科的な処置を行うことがあります。

 

さらに、骨の中に埋まっている永久歯の歯冠に小さな矯正装置を取り付け、ゆっくりと適切な位置まで引っ張り出す治療(エクストリュージョン、矯正的挺出術といいます)を行うこともあります。

 

エクストリュージョンにつきましては、提携医院である町田歯科・矯正歯科のクラウンレングスニングとエクストリュージョンのコラムに詳しい解説がありますので、ご興味のある方は併せてご参考になさってください。

お子さんの乳歯の生え変わり、気になることは札幌駅すぐそばのポラリス歯科にご相談ください

お子さんの乳歯の生え変わり、気になることは札幌駅すぐそばのポラリス歯科にご相談ください
 

お伝えしたように、乳歯は通常、6歳頃から12歳頃にかけて永久歯へと生え変わっていきます。しかし様々な理由により、乳歯が抜けずに残ってしまうこともあります。

 

乳歯の晩期残存がある場合は、次の永久歯がどうなっているのかによって治療の選択肢が異なってきますので、早めに歯科医院で診てもらうことが大切です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科では、乳歯の晩期残存に関するご相談はもちろんのこと、永久歯を含めたお子さんの歯の状態を的確に診断し、正しい生え変わりと噛み合わせが実現できるよう、丁寧にサポートいたします。お子さんの乳歯のことでご質問やご心配な点がございましたら、どうぞお気軽に札幌駅すぐそばのポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。