マタニティ歯科
親になって実感!子どもの頃に身につけたかった歯の健康習慣~今からでもできる正しい対処法とは?

親になって初めて、「もっと若い頃から歯を大事にしておけばよかった」と感じる方は少なくありません。
- 治療した銀歯が目立つ…
- 神経を取った歯が黒ずんできた…
- 歯並びの悪さがずっとコンプレックスになっている…
そんなご自身の経験から、「子どもには絶対に同じ思いをさせたくない」と強く願う親御さんは非常に多いものです。
実は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中に虫歯菌は存在しません。菌の主な感染経路は周囲の大人であると考えられており、お子さんの歯を健全な状態で維持していくには、親御さんがお口を健康に保つことが重要になります。
今回は、親になってから後悔したお口の問題と、その経験を活かして、「今日から家族でできること」について解説します。忙しい毎日でも無理なく続けられるケアを知って、健康な歯を育んでいきましょう。
親になって後悔した歯とお口の問題
タイムマシンを使って過去に戻ることはできませんが、親御さんご自身の歯について、どのような点を後悔している方が多いかを知ることで、今後の対策が立てやすくなります。ここでは、親世代からよく聞く主な後悔を4つ見ていきましょう。
若い頃の虫歯放置と神経を取った歯の多さ

もっとも多いのが、「痛みが治まったから」と虫歯治療を先延ばしにしてしまったケースです。
虫歯を放置すると、根管治療(歯の神経を取る治療)や、最終的には抜歯をしてブリッジやインプラントを入れることになる場合もあります。
「若い頃にしっかり治しておけば、ここまで歯を失わずに済んだかもしれない」と後悔する親御さんは少なくありません。
ただし、今からでも遅すぎることはありません。
- 治療が必要な歯をきちんと治す
- 治した歯を定期検診とクリーニングで守る
この2つを徹底するだけで、お口の寿命もお子様への意識も大きく変わります。
歯並びを整えなかったことによる見た目のコンプレックス

「笑うと歯並びが気になって思いきり笑えない」というコンプレックスも、親になってから強く意識することが多い悩みです。
歯並びをきれいにするだけじゃない!矯正治療の様々なメリットのコラムでも解説したように、歯並びは見た目だけでなく、歯みがきのしやすさや、噛み合わせ、発音や活舌(※)にも関係してくる大切なものなのです。

子どもの矯正治療は、大人の矯正とは異なります。成長期に矯正治療を行うと、顎の成長を利用することで、将来の抜歯を伴う矯正を回避できる可能性が高くもなります。
ご自身が悩んだ経験があるからこそ、お子様の歯並びについては「様子を見る」のではなく、早めに相談するのが良いでしょう。
(※)滑舌については、滑舌が悪い?それって低位舌(ていいぜつ)が原因かものコラムをご参照ください。
痛い時だけ歯医者に通っていた

「歯医者=痛い時だけ行く場所」というイメージのまま大人になり、定期検診に通う習慣がなかったという方も多いものです。
しかし現在は、予防歯科の考え方が主流です。日本歯科医師会も、虫歯や歯周病の多くが定期的なチェックとクリーニングで予防できることを繰り返し発信しています。
痛くなってからの治療は、麻酔や通院回数が必要になり、時間も費用かかるうえ、歯へのダメージも大きくなってしまいます。3ヶ月〜半年に一度の定期検診を受けていれば、痛みもなく、少ない負担で歯を守ることができるでしょう。
妊娠・出産期のケア不足による歯周病の悪化

妊娠中はホルモンバランスや生活リズムの変化により、歯茎が腫れたり、出血しやすくなったりします。
「つわりで歯みがきがつらくて、そのままケアを怠ってしまった」という経験を、出産後に後悔する方も多いのです。
妊娠中・産後の歯周病ケアは、お母さん自身の健康だけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にも関わるテーマです。体調が良い時間帯を見つけてケアを行い、安定期には歯科検診を受けるようにしましょう。
妊娠中の歯のケアについては、マタニティ歯科のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
親のお口の環境や生活習慣が、お子さんの歯に影響する理由

お子さんがいらっしゃる親御さんの中には「自分の歯はもう仕方ないから、子どもの歯だけ守れればいい」と考える方もいます。
しかし、歯並びや虫歯、歯周病って遺伝するの?のコラムでお話ししたように、実際に「歯の質」そのものが遺伝する影響はそれほど大きくありません。
実は、親から子へ受け継がれてしまうのは、遺伝子以上に「お口の環境」や「生活習慣」、「歯に対する価値観」です。
ここでは、親御さんの状態や行動が、どのようにお子様の歯に影響を与えるのか、3つの視点から解説します。
親の虫歯菌・歯周病菌が家族にうつる仕組み

虫歯の原因となるミュータンス菌は、生まれたばかりの赤ちゃんのお口にはほとんどいません。歯が生え始める頃から、家族との生活の中で徐々に定着していきます。
かつては「スプーンやお箸の共有」「キス」などを避けるべきと言われていましたが、生活の中で唾液感染を完全に防ぐことは困難です。
最近の学会の見解では、食器を共有しないことだけに神経質になるよりも、親自身が虫歯や歯周病を治して、お口の中の菌を減らしておくことが重要とされています。親のお口の中が清潔で健康であれば、お子様への感染リスクを減らすことができます。
親の食習慣と歯磨き習慣を子どもは受け継いでいく

「子どもは親の背中を見て育つ」と言いますが、お口のケア習慣も例外ではありません。親御さんが甘いお菓子やジュースを頻繁に摂る習慣があったり、寝る前の歯みがきを面倒だと省いてしまったりすると、お子さんはそれを当たり前の生活として学習してしまいます。
反対に、親御さんが以下のような行動を自然に行っていれば、お子さんも自然にそれを真似するようになります。
- 甘い物は時間と量を決めて食べる
- 食後や寝る前に歯みがきをする姿を見せる
- 歯医者に「仕方なく行く」のではなく「定期的にチェックしてもらう」
歯への価値観の違いが、お子さんの歯のケア意識を左右する

親が歯に対してどのような価値観を持っているかは、お子さんの将来の健康意識を左右します。
「歯が痛くなったら初めて治療すれば良い」「年老いたら入れ歯でも仕方ない」…というような考えでいると、無意識のうちにケアが後回しになり、その姿勢はお子様にも伝わってしまいます。
一方で、親御さんが「自分の歯をできるだけ長く残したい」という姿勢を持ち、定期検診や予防ケアに前向きに取り組んでいると、お子様も自然と「歯は大切にするもの」という価値観を持つようになります。
「忙しいから」とご自身を後回しにせず、まずは親御さんがお口の健康を重視してください。その姿勢こそが、結果としてお子さんを虫歯や歯周病から守ることにつながります。
親になってから見直したい歯とお口の予防ケア
歯やお口について後悔している理由と、親の影響が分かったところで、何を重視することから始めれば良いのでしょうか?ここからは、忙しい子育て世代でも取り組みやすい、予防ケアをご紹介します。
親子で通う定期検診とフッ素ケアの習慣化

定期検診は、虫歯や歯周病を「治す」ためではなく、「悪くなる前に気づく」ためのものです。
特に有効なのはフッ素(フッ化物)の活用です。日本歯科医師会や日本小児歯科学会も推奨しているように、フッ素には
- 歯の質を強くする
- 初期虫歯を修復(再石灰化)する
- 菌の活動を抑える
という歯に有効な3つの効果があります。
そして、定期検診を受ける際は、以下のポイントを意識してみましょう。
- 親子で同じ日に定期検診の予約を入れる
- 年齢に合ったフッ化物入り歯みがき剤を毎日使う
- 必要に応じて、歯医者でフッ化物塗布や(※)シーラントを検討する
これらを家族の習慣として続けることで、虫歯や歯周病のリスクを効率良く下げることができます。
(※)フッ素(フッ化物)やシーラントの活用については、フッ化物の安全性、シーラントによる虫歯予防の各コラムを併せてご参照ください。
仕上げみがき・点検みがきを小学校中学年まで続ける

仕上げみがきは、子どもが一人で磨けるようになるまでの一時的なものではありません。
日本小児歯科学会は、乳幼児期は大人がしっかり仕上げ磨きをし、小学校中学年くらいまでは子どものみがき方をチェックして不十分な部分を補うことを勧めています。
- 子どもが自分で歯を磨く「自分磨き」
- その後に大人がチェックする「仕上げ・点検磨き」
この2段階方式を、少なくとも小学校中学年ごろまでは続けていくと安心です。毎日が難しければ、寝る前だけは必ず親子で磨くというルールを決めると続けやすくなるでしょう。
歯並びや呼吸に影響する癖と食事の習慣を見直す

長時間のスマホやタブレット使用で前かがみの姿勢が続くと、顎や首まわりの筋肉バランスが崩れ、口が開きやすくなることがあります。
コラムでもお伝えした口が半開きの「お口ポカン(ポカン口)」など、お子さんの口腔機能発達不全症は、口呼吸や歯並びの乱れにつながる可能性があり、早めの対策が重要です。
- 食事中はテレビやスマホを置く
- 姿勢よく座って噛む習慣をつける
- 外遊びや全身を使う遊びの時間を増やす
こうした工夫が、顎の発達と口腔機能の成長を支えることにつながります。お子さんの口腔機能を正常に保つための対策について、より詳しく知りたい方は、MFT(口腔筋機能療法)のコラムをご参照ください。
親自身も治療やホワイトニングを行って子どものお手本になる

「歯を白く健康に保つのが大切!」とお子さんに伝えても、親御さんの歯の色が美しくなかったり、歯が傷んでいては説得力がありません。親御さんが自分自身の歯を大切にし、メンテナンスやホワイトニングでお口をきれいな状態に維持しましょう。
「お父さん・お母さんの口元はきれいだな」とお子さんに感じさせることができれば、生きた教材になります。ぜひ、ご自身のケアも楽しんで行ってください。
後悔した経験を子どもの歯の未来に活かそう

親になってから、虫歯の放置や、歯並びや歯の美しさのコンプレックスについて後悔される方は多くいらっしゃいます。
しかし痛みやコンプレックスを知っている親御さんだからこそ、お子さんに「歯をきれいに保ち、しっかりと予防を心がける価値観」という素晴らしいプレゼントができるはずです。
- 親御さん自身の歯やお口の環境を健康に保つ
- 親子で定期検診とフッ素ケアを続ける
- 仕上げ磨きや食習慣・姿勢を見直す
この3つを少しずつでも始めることで、「自分がしてこなかったこと」を、お子さんと一緒に取り戻していけるようになるでしょう。
もし「何から始めればいいかわからない」「子どもの歯について気になることがある」という場合は、一人で悩まずに、ポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。
ポラリス歯科・矯正歯科では、大人の方の歯科治療に加え、お子様一人ひとりの年齢や虫歯リスクに合わせた、効果的な予防法もご提案しています。歯科医院専用の高濃度フッ素塗布や、ご家庭での正しいケア方法についても丁寧にアドバイスいたしますので、まずは札幌駅すぐそばのポラリス歯科・矯正歯科へ、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
参考:
- 公益社団法人 日本歯科医師会「妊娠時の歯やお口のケア」「妊娠時の歯やお口のケア Q&A」『歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020』
- 公益社団法人 日本小児歯科学会「産まれてから2歳頃まで」、「3歳ごろから就学前まで」
- 一般社団法人 日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」学会声明





