歯の治療全般
マスク生活がお口の健康に与える影響とは?

コロナ禍によって、多くの人がマスク生活を余儀なくされた時期があったと思います。現在、新種のニンバスが猛威を振るいつつあるものの、新型コロナウイルス感染症が第5類に移行して、行動制限も解除されてからは、そこまでマスクをしなくなったという方も多いでしょう。
一方で、ずっとマスクを着ける生活に慣れてしまった、あるいは、その方が良いという方もいらっしゃいます。
もちろん、マスクを着けるのは個人の自由なのですが、そんな方たちの中で、
- マスクをしていると、なんだか口が乾く…
- 自分の口臭が前より気になるようになったかも?
- マスク生活になってから、口のトラブルに悩まされる気がする
このようなお悩みを抱える方も増えてきています。
マスクは上手に使用すればお口周りの乾燥を防ぎ、飛沫を周囲に飛ばさないようにするメリットがあります。しかし、その呼吸のしづらさから、知らず知らずのうちに、口で呼吸してしまう方がいます。
実はこの口呼吸が、虫歯や歯周病、口臭、歯並びの悪化といった、様々なお口のトラブルを引き起こす原因になるのです。
今回は、マスク生活がお口の健康に与える影響と、今日から始められるセルフケア方法、歯科医院で受けられるプロフェッショナルケアなどについて解説します。
マスク生活による口呼吸が歯やお口に与える影響とは

上述のとおり、マスク着用が習慣となっている方に増えているのが口呼吸です。マスクで呼吸がしづらくなると、つい口をぽかんと開けて呼吸してしまいます。
しかし、これまでも多くのコラムで触れてきたように、呼吸は本来、鼻で行うのが正常です。鼻には、吸い込んだ空気を加湿し、ウイルスや細菌をフィルタリングする一種の防御機能があるのです。
口呼吸が常態化すると、この防御機能が働かないばかりか、お口の中に次々とトラブルを引き起こす引き金となってしまいます。
お口の乾燥(ドライマウス)

まず挙げられるのが、お口の乾燥です。口呼吸は唾液が絶えず蒸発し、カラカラの状態(ドライマウス)になりやすくなります。
唾液は単なる水分ではなく、私たちの歯と歯茎を守る役割もあります。口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方のコラムでもお伝えしたように、唾液が減ると、お口の中が無防備な状態になってしまいます。
虫歯や歯周病のリスクが増す

唾液には、細菌の活動を抑える抗菌作用、虫歯になりかけたところを補修する再石灰化作用、虫歯菌の作った酸を中和する緩衝作用など、虫歯や歯周病を防ぐための多くの働きがあります。
口呼吸で唾液が減ると、虫歯や歯周病から守る働きが低下するので、虫歯や歯周病になりやすくなります。
口臭が発生しやすくなる

口臭の原因は様々ですが、その主な原因は、お口の中の細菌がタンパク質を分解する際に発生する揮発性硫黄化合物というガス(※)です。
唾液が減って細菌が増え、汚れも洗い流されにくくなることで、このガスが大量に発生し、強い口臭を引き起こします。
(※)口臭の種類や原因物質について詳しく知りたい方は、提携医院である町田歯科の詳しく知ろう!口臭の種類、原因と対策のコラムもご参照ください。
歯並びが悪くなる

「口呼吸で歯並びが悪くなる」と聞くと意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは事実です。
鼻呼吸をしている状態ならば、舌は上顎にぴったりと収まっています。この舌の位置が、上顎のアーチを内側から支え、きれいな歯並びを形成しています。
しかし、口呼吸になると舌の位置が下がり(※低位舌:ていいぜつ)、下の前歯に当たるようになります。結果として、
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ:いわゆる出っ歯)や開咬(かいこう:奥歯で噛んでも前歯が閉じない)になる
- 頬の筋肉が内側に歯を押し、歯並びがガタガタ(叢生:そうせい)になる
- お子さんの場合、顎の正常な発育が妨げられ、アデノイド顔貌(がんぼう)と呼ばれる独特の顔つきになる
など、審美的にも機能的にも深刻な問題を引き起こすのです。

※低位舌については、滑舌が悪い?それって低位舌(ていいぜつ)が原因かものコラムをご参照ください。
全身の健康にも悪影響が
口呼吸は、お口だけの問題に留まりません。口で呼吸すると、ウイルスや細菌が直接喉に侵入しやすくなるため、風邪やインフルエンザにもかかりやすくなります。
そのほか、リウマチやアトピーの原因になるとも言われています。
マスク生活に合わせたお口のケアについて
ここでは、口内環境を健やかに保つためのセルフケアのポイントを5つご紹介します。
鼻呼吸を意識する

口呼吸によるお口の乾燥を防ぐには、意識的に口を閉じ、鼻で呼吸する習慣を取り戻すことが基本です。日中、気づいたときに口を閉じて鼻で深呼吸するだけでも効果があります。
就寝中に無意識に口が開いてしまう方は、薬局などで手に入る口閉じテープ(マウステープ)を試してみるのも一つの方法です。
口閉じテープ(マウステープ)の使用法については、話題のマウステーピングとは?~安全性・効果・おすすめの使い方のコラムで詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
鏡を見て歯を磨く

歯をきれいに磨く習慣も大切です。歯を磨く時は、何かをしながら磨く、もしくはダラダラ磨くのではなく、鏡を見ながらどこが磨けているのか、どこに磨き残しがあるのか意識しながら磨くようにしましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用

歯磨きは歯ブラシでするものですが、歯ブラシだけではきれいにできません。歯ブラシだけで落とせる歯の汚れは、全体の約60%と言われています。
歯と歯の間や、歯と歯茎の境目は、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、きれいにしてください。
舌のケアも忘れずに

口臭の原因となる舌の表面の汚れ(舌苔:ぜったい)も専用の舌ブラシを使い、奥から手前に優しく撫でるように清掃しましょう。
デンタルリンスも使う

デンタルリンス(洗口液)の使用もおすすめです。デンタルリンスは、歯磨き後に使い、口内を殺菌・洗浄して虫歯や歯周病、口臭を予防してくれます。
お口の環境を健康に保つには、口内の細菌に対して殺菌効果のある成分を含んだデンタルリンスが有効です。寝る前や、歯磨きの後のうがいの時などに使ってみてください。
デンタルリンスやマウスウォッシュについてはマウスウォッシュを使う時のポイントのコラムで紹介していますので、併せてご参考になさってください。
定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けましょう
「毎日しっかりケアしているから大丈夫」と思っていませんか?しかし、どんなに丁寧にセルフケアを行っても、ご家庭では決して除去できない汚れがあります。歯科医院での歯のクリーニング(プロフェッショナルケア)も定期的に受けるようにしてください。
歯ブラシでは取れない歯石を取り除ける

歯石は、歯の表面についたプラーク(歯垢)が古くなり、石のように硬く歯にこびりついたものです。歯石は歯肉の腫れの原因になるだけでなく、新しいプラークの温床にもなります。
歯石は歯ブラシで擦っても取れません。歯科医院で定期的に取り除いてもらう必要があります。
PMTCでバイオフィルムも除去できる

虫歯菌や歯周病菌は、集団で強力なバリア(膜)を作って歯の表面にこびりつきます。これをバイオフィルムと呼び、抗菌薬やうがい薬も効きにくい非常に厄介な存在です。
このバイオフィルムを専門の機器と研磨剤で徹底的に除去するのが、予防歯科・メンテナンスのページでお伝えしているPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)です。
PMTCを受けた後の歯は表面がツルツルになり、汚れが再付着しにくくなる効果も期待できます。まさに一石二鳥のプロフェッショナルケアです。
マスク生活でのお口のお悩みもポラリス歯科・矯正歯科に

今回は、マスク生活が歯やお口の健康に与える影響やその対策についてお話ししました。マスクを着けていると知らず知らずのうちに口呼吸になっていることがあるため、注意してください。
お伝えしたように、口呼吸は、お口の乾燥化を通して虫歯や歯周病のリスクを高めたり、歯並びを悪くしたりしますし、全身の健康にも悪影響を与えます。
マスクを長時間使っている方は、口が開いていないか気を配り、鼻での呼吸を意識してみてください。また、歯やお口のケアも丁寧にしていただき、歯科医院でのクリーニングも受けて、歯やお口の健康を守るようにしましょう。
ポラリス歯科・矯正歯科は、一般的な歯科治療だけにとどまらず、患者さん一人ひとりに合ったお口のトータルケアを提供いたします。マスクを着ける生活が長引いてから、どうもお口の調子が悪い、口臭が気になるとお感じの方も、札幌駅すぐそばのポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。