歯が折れた、欠けた…そんな時どうする?

歯が折れた、欠けた…そんな時どうする?
 

親御さんに連れられ、歯が折れたり、欠けたりしたお子さんが来院されることがあります。歯にボールが当たった、転んで歯を打ったなど理由は様々です。授業中ならば、学校の先生が同伴していらっしゃいます。

 

もちろんお子さんだけでなく、大人でも歯が折れたり、欠けたりするケースもあります。ケガや交通事故などが主な原因です。このように歯の様々な箇所が折れたり、欠けたりすることを、専門的には歯牙破折(しがはせつ)と呼びます。

 

頭や手足に出血があれば、まず一般的な医科を受診しますが、歯や口周辺などが主な外傷部位で、歯牙破折がある時は、歯科から対応することになります。今回は、何らかのきっかけで歯が折れてしまったり、欠けてしまった場合の対応についてお伝えしたいと思います。

歯が折れた時、欠けた時の緊急対応

歯が折れたり、欠けてしまった時、焦る気持ちは重々理解できますが、次のような対応を心掛けていただけると良いでしょう。

折れた歯・欠けた歯を集める

折れた歯・欠けた歯を集める
 

歯が折れたり、欠けたりした時、まず折れた歯のかけらを探し集めてください。歯のかけらは乾燥させないようにラップやガーゼに包み、詳しくは後述しますが、水や牛乳に浸けておきます。歯は乾燥にとても弱いためです。

 

可能なら、歯科医院へ30分以内に行くのが望ましいと言えます。歯のかけらに汚れが付いている時は、水で洗ってください。歯ブラシなどでこすったりしてはいけません。

折れた歯・欠けた歯の保管

歯牙保存液
 

集めた歯のかけらをできるだけ乾燥させず、丁寧に保管します。一番望ましいのは歯牙保存液(しがほぞんえき)という専用液に浸すことで、これが理想的です。

 

学校の保健室には歯牙保存液が備えられていることもありますが、ご家庭などではそうもいかないケースもあるでしょう。その場合は、ドラッグストア等で入手できるコンタクトレンズ用の保存液や生理食塩水に浸してください。歯の乾燥を防ぎ、周りの組織を正常な状態に保ちやすくしてくれます。

 
折れた歯、欠けた歯を牛乳に浸す
 

こういったものがお手元にない場合は、牛乳に浸す方法があります。牛乳は口の中に近いpHなので、歯の周りの組織を保護できます。しかし、専用液や生理食塩水よりは効果が劣ります。牛乳もない場合は水道水に浸しますが、できれば今まで挙げてきたような液体の中に保存するのが良いでしょう。

 

また、口の中に含むという手段もあります。口の中に含む場合は、誤って歯のかけらを飲み込んだり、噛んだりしないように注意してください。かなり難しい方法ですが、口の中は歯のかけらの乾燥を防ぎ、血液・唾液によって組織を活性化してくれるので、有効と言えます。

歯科医院の受診へ

歯科医院の受診へ
 

可能な限り、歯を収集・保管したうえで、歯科医院を受診します。歯科医院では、折れた歯、欠けた歯の神経の露出の有無により、治療法が異なってきます。

 

具体的な治療方法は後述しますが、小さく欠けた時は、歯と同じ色のプラスチック樹脂で補います。大きく欠けてしまった時は、折れた歯のかけらを接着することもありますが、多くの場合、歯の神経が露出しているため、根管治療が必要になります。根管治療については、根管治療のシリーズコラムでも解説していますので、詳しく知りたい方は、併せてご参照ください。

 

また、歯根(しこん)が折れてしまった時は、残念ながら抜歯になるケースが多くなります。

折れた歯・欠けた歯の治療

折れた歯・欠けた歯の治療,歯冠と歯根

折れてしまった歯や、欠けてしまった歯の治療については、歯茎の上に出ている歯冠(しかん)部分の治療と、歯茎に埋まっている歯根(しこん)部分の治療によって、方法が異なります。

 

歯冠部分の損傷は、状態に応じて最適な詰め物・被せ物を用いた治療をしていきます。これには保険診療のものと、自費診療のものがあります。

折れた歯・欠けた歯の保険診療

歯冠部の損傷を治療する場合、コンポジットレジン(CR)の充填が候補に挙がります。歯科用樹脂に強度強化のための物質を混ぜたもので、軽度の虫歯や、歯に欠損が生じた際の補修などに使われます。

 

見た目も自然でコストもかからず、治療回数も少ないといったメリットがありますが、プラスチック素材ですので、ずっと使用できるほどの耐久性は持ち合わせていません。

 
レジン前装冠
 

詳しくは詰め物・被せ物ページで解説していますが、他にレジンを素材としたものには、レジン前装冠レジンジャケット冠があります。レジン前装冠は中身に金属を入れて支えにし、外側をレジンで覆った詰め物・被せ物です。レジンジャケット冠は全体がレジンでできている詰め物・被せ物です。これらも同様に見た目は自然ですが、やはり耐久性はそこまで強くありません。

 
CAM/CAD冠
 

また、CAD/CAM冠を使用することもあります。CAD/CAM(キャドキャム)とはComputer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略で、以前は手作業で作られていた詰め物・被せ物を、患者さんの口腔内をスキャンし、コンピューターを使って製作するもので、従来のような型取りも必要なく、見た目も自然です。セラミックを含む素材で作られ、耐久性はレジンジャケット冠よりも強いのですが、後述する自費診療の素材には及びません。

 

これら保険適用の治療は、1本あたり数千円程度で、通院回数も1~2回で済むため、コストや時間の面で利点があります。ただし、お伝えしてきたようにプラスチック素材のため、耐久性の面では注意が必要です。

折れた歯・欠けた歯の自費診療

セラミッククラウン
 

保険適用の素材よりも、耐久性や審美性に優れた素材を用いて、折れた歯や欠けた歯を修復したい方には、セラミッククラウンが適しています。詳細はセラミッククラウンの種類のコラムで解説していますので、ここではざっと種類と特徴を挙げておくことにしましょう。

 

セラミック(陶器)の被せ物として、長年の歴史を誇るのがメタルボンドです。内側を金属で補強しているため、大変強度があって割れにくく、50年以上使われているので安定性も高いのが特長です。

 
ジルコニア・オールセラミック
 

より審美性を求める方には、ジルコニア・オールセラミックも候補になります。オールセラミックの名のとおり、全てセラミックで作られており、人工ダイヤとして利用されるジルコニアを素材にしていますので、とても美しい仕上がりになります。メタルボンドは内部の金属が光を通さないため、見た目という点では、どうしてもジルコニア・オールセラミックに劣ります。

 

これらは自費診療のため、コスト面では保険診療のものより高価になりますが、折れてしまった歯や欠けてしまった歯を、より美しく修復し、長く使いたいという方には有力な選択肢になるでしょう。

歯根が折れてしまった時

ヒビや破折(はせつ)
 

歯根が折れてしまっているとは、歯茎に埋まっている歯の根っこの部分が割れたり、ひびが入っている状態を指します。歯根が折れてしまうと、その隙間に細菌が入り込み、炎症を起こします。悪化すると、顎の骨を溶かしたり、周囲の歯に悪影響があるため、抜歯せざるを得ないことが多くなります。

 

歯根が折れてしまった状態は、レントゲン撮影で確認することができます。しかし初期の状態では、折れた箇所がまだ小さく、レントゲンで撮影しても分からないこともあります。そのため、自覚症状に注意することが大切です。

  • 歯茎の腫れや、食べた時の痛みがある。
  • 歯の根元にできものができている。
  • 歯の動揺(グラグラすること)が大きくなっている。

これらの症状があれば、歯根が折れている可能性を踏まえた治療を考えていくことになります。なるべく早く歯科医院を受診し、正確に診断してもらうようにしましょう。

歯が折れたり、欠けたりした時も正しい対応を

歯が折れたり、欠けたりした時も正しい対応を
 

冒頭でもお伝えしたように、歯が折れたり欠けたりした時は、気が動転して、どうしたらいいか分からなくなる方がほとんどです。

 

冷静に対処するのは難しいものですが、今回お伝えした対応を押さえておけば、正しい対処の役に立つはずです。ぜひ覚えておいてください。

 

破損した歯を適切な方法で保存し、可能な限り早く歯科医院を受診すれば、修復できる可能性も高くなります。歯が折れたり、欠けたりした時も、落ち着いてポラリス歯科・矯正歯科にご相談いただければと思います。