話題のマウステーピングとは?~安全性・効果・おすすめの使い方

話題のマウステーピングとは?~安全性・効果・おすすめの使い方
 

「最近、寝ている時に口が開いている気がする…」
「いびきがうるさいと家族に言われた…」
「朝起きると、お口の中の乾燥が気になる…」

 

そんな悩みを持つ方の間で注目されているのが、今回取り上げるマウステーピングです。SNSでも「朝スッキリ起きられるようになった」「いびきが減った」などの声が広がり、手軽に試せる睡眠改善法として取り入れる人が一気に増えたようです。

 

しかし、本当に効果があるのか、また安全性に問題はないのかと思う方も多いでしょう。

 

そこで今回は、歯科医師の視点から信頼できる研究データ(エビデンス)をもとに、マウステーピングの効果や注意点、安全に始めるための正しい方法について詳しく解説します。

マウステーピングとは?話題の理由と仕組み

SNSで広がった「口を閉じて寝る」健康法

SNSで広がった「口を閉じて寝る」健康法
 

SNSや動画サイトで話題になったマウステーピングとは、寝ている間に口が開かないようにテープを貼り、鼻呼吸を促す方法です。この際に使用するテープは、口閉じテープ鼻呼吸テープという名称で販売もされています。

 

そして冒頭でも触れたように、「朝起きたときに喉が乾かなくなった」「いびきが軽くなった」といった体験談が拡散されたことで、一気に注目を集めるようになりました。

 

マウステーピングは医療機器を使う必要もなく、誰でもすぐに試すことができますが、仕組みや正しい使い方、そして安全性について正しく理解することが大切です。

マウステーピングの目的と仕組み

口呼吸をしている
 

マウステーピングの主な目的は、「寝ている間の口呼吸を防ぐこと」です。

 

これまでもポラリス歯科の多くのコラムで取り上げてきたように、口呼吸には様々な悪影響があります。人は無意識のうちに口を開けて寝てしまうことがありますが、それが続くと、喉の乾燥やいびき、虫歯歯周病のリスクが高まってしまうのです。

 

マウステーピングは、唇の中央部に優しくテープを貼ることで、無理なく口を閉じるように誘導します。完全に密閉するのではなく、意識しなくても自然に鼻で呼吸する状態を作るようにするのが理想的です。

マウステーピングの効果~エビデンスからわかること

口呼吸から鼻呼吸へ切り替えるメリット

口呼吸から鼻呼吸へ切り替えるメリット
 

鼻呼吸にすると、体内に入る空気を温め・加湿し、細菌やホコリを除去してくれるフィルター機能が働きます。また、鼻腔で生成される一酸化窒素(NO)には血流を良くしたり、免疫機能を高めたりする働きがあることも知られています。

 

一方、口呼吸が続くと、口内の乾燥や細菌の繁殖が進みやすくなり、上述のように、虫歯歯周病、さらには口臭の原因にもなります。マウステーピングで鼻呼吸を習慣化することは、こうしたリスクの軽減につながると考えられているわけです。

マウステーピングによるいびきや睡眠の質の改善は?

マウステーピングによるいびきや睡眠の質の改善は?
 

実際にいくつかの研究では、マウステーピングが軽度のいびきや軽度の睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対して効果があることが示されています。

 

たとえば、台湾の研究では、軽度の睡眠時無呼吸症の患者さんに対し、就寝時に口閉じテープを貼ったことで、いびきの回数が約半分に減少し、睡眠中の酸素不足も改善されたという結果が出ています。

 

ただし、この論文で対象としているのは、あくまでも「鼻がしっかり通っている軽度の患者」に限られており、中等度以上のOSAや慢性的な鼻づまりがある場合には推奨されていません。あらゆる人に効果があるわけではないので、注意が必要です。

安全性は大丈夫?歯科医師が注意するポイント

マウステーピングは鼻づまりのある人はNG?呼吸困難リスクも

マウステーピングは鼻づまりのある人はNG?呼吸困難リスクについて
 

マウステーピングはとても簡単な方法ですが、お伝えしたように、全ての人にとって安全というわけではありません。

 

特に注意が必要なのは、慢性的な鼻づまりやアレルギー性鼻炎を抱えている方です。鼻呼吸がしっかりできない状態で口を塞ぐと、十分な空気を取り入れられず、呼吸困難や酸欠のリスクが増えてしまいます。

 

実際に、アメリカの耳鼻咽喉科医からは、「SNSの影響で安易にマウステーピングを始める人が増えているが、鼻づまりのある人は絶対に使用すべきでない」といった警告も出されています。小児や高齢者など、自己判断が難しい人には使用を避けるのが良いと言えます。

マウステーピングによる皮膚への刺激や違和感への対処法

マウステーピングによる皮膚への刺激や違和感への対処法
 

もう一つの懸念は、肌への刺激です。市販のテープには粘着力が強いものもあり、皮膚が赤くなったり、かぶれてしまったりすることがあります。唇の周囲は皮膚が薄いため、敏感な方は低刺激性の医療用テープや、マウステーピング専用の商品を選ぶのが安心です。

 
唇の周囲は皮膚が薄いため、敏感な方は低刺激性の医療用テープや、マウステーピング専用の商品を選ぶのが安心です。
 

いきなり口全体を塞ぐと息苦しさを感じることもあるので、最初は小さなテープを縦方向に貼るだけにして、徐々に慣れていくようにしましょう。また、眠っている間に無意識に剥がしてしまう人も多いため、まずは週末などに試すのが良いでしょう。

マウステーピングを始める際の注意点

マウステーピングを始める際のチェックポイント
 

マウステーピングを安全に始めるには、まず、ご自身が鼻でしっかり呼吸できるかを確認することが第一です。意識して鼻で呼吸してみて、違和感や詰まりがないかチェックしましょう。

 

鼻詰まりがある場合は使用を控え、耳鼻科を受診してからにしてください。マウステーピングを行っても問題がなさそうか、きちんと確認するのが大切です。

 

実際の貼り方としては、唇の中央に縦方向にテープを貼るのが一般的です。完全に口を塞ぐのではなく、軽く閉じる感覚で、必要があれば息ができるようにしてください。

 

初めて使う際は、日中や昼寝の時など、必要以上に睡眠時間が長くならない状況で試してみて、感覚に慣れることから始めてみるのもポイントです。

ご自身の状態をきちんと見極めることが大切

ご自身の状態をきちんと見極めることが大切
 

マウステーピングは、軽度のいびきや喉の乾燥に悩んでいる方が、口呼吸を止めて鼻呼吸ができるようになる手軽なセルフケアの一つとして注目を集めました。

 

ただし、鼻づまりがある方や、中等度以上の睡眠障害が疑われる方には、マウステーピングは推奨されません。安全性を考慮し、必ず鼻の通りを確認したうえで使用するようにしてください。

 

また、いびきがずっと続く、日中の眠気が強いといった症状がある場合は、耳鼻咽喉科や睡眠外来での検査が必要になるケースもあります。

 

マウステーピングはあくまで補助的な手段であり、根本的な改善には、医療的なアプローチが求められることを忘れないようにしてください。手軽な健康法として話題性があっても、ご自身の体調と生活スタイルに合っているかを見極めるのが大切です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科には、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、総合的なお口のケアをご提供いたします。いびきや口腔内の乾燥が気になるという方や、口呼吸に悩んでいらっしゃる方は、札幌のポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にお問い合わせください。

 

参考文献:Lee YC, Lu CT, Cheng WN, Li HY. The Impact of Mouth-Taping in Mouth-Breathers with Mild Obstructive Sleep Apnea: A Preliminary Study. Healthcare (Basel). 2022 Sep 13;10(9):1755. doi: 10.3390/healthcare10091755. PMID: 36141367; PMCID: PMC9498537.