口の中をやけどしてしまったらどうする?【緊急時の対応】

口の中をやけどしてしまったらどうする?【緊急時の対応】
 

そろそろ年末が近づいてきましたね。忘年会や帰省など、何かと会食の機会も増えると思います。そんな時、ついつい熱い鍋物などを口にして、お口の中をやけど(火傷)してしまったという経験がある方も多いのではないでしょうか。

 

口の中のやけど(熱傷)は、誰しも一度は経験する身近なケガです。しかし、ただ「冷やせば治る」と思っていると、治りが遅くなったり、実は危険な薬品によるやけど(化学熱傷)を見逃してしまったりする恐れがあります。

 
特に小さなお子さんや高齢者がいるご家庭では、原因によって対処法がまったく異なるため、お口の中のやけどには注意が必要
 

特に小さなお子さんや高齢者がいるご家庭では、原因によって対処法がまったく異なるため、お口の中のやけどには注意が必要です。

 

そこで今回は、熱傷と化学熱傷の違い、それぞれの応急処置、避けるべき行動、病院へ行く目安などについて、詳しく解説します。

口の中のやけどの種類

お口のやけどは、大きく分けると2つがあります。

熱傷(ねっしょう)

口の中のやけど:熱傷
 

いわゆる普通のやけどです。熱いスープや揚げ物を口にしたときや、電子レンジで加熱しすぎた食べ物を食べた時に、口の中をやけどした経験がある方も多いでしょう。

 

お口の粘膜は、およそ60℃くらいまでなら耐えられますが、それ以上の温度になるとやけどを起こす危険性が上がります。

 

熱い食べ物や飲み物に触れたところが、痛んだり、舌触りが変わったり、もしくは粘膜が剥がれたりしたら、やけどを起こした可能性が高いといえます。

化学熱傷

口の中のやけど:化学熱傷
 

化学熱傷は、酸やアルカリなどの化学物質によるやけどです。原因となるもので多いのが、乾燥剤としてよく使われている生石灰(せいせっかい)です。食べ物と一緒に、もしくは食べ物と間違えてお口に入れてしまうと、化学熱傷を引き起こしてしまいます。

 

その他にも、漂白剤や強力な洗浄剤や薬剤を誤って飲んでしまった場合にも化学熱傷は起こります。2025年の日本口腔・咽頭科学会の報告では、胃薬と間違えて過マンガン酸カリウムという薬品を飲んでしまい、口から喉にかけて広範囲の熱傷を負った事例も報告(※)されました。

 

(※)参考:過マンガン酸カリウムによる口腔咽喉頭熱傷例(J-STAGE)

知っておきたい化学熱傷の特性

ここでは、普通のやけどとは少し違う化学熱傷の怖さと特徴について補足します。特に認知症を患っている高齢者やお子さんがいるご家庭で起こりやすいので、予防のためにもぜひ知っておいてください。

痛みがすぐに出ない

化学熱傷の特性:痛みがすぐに出ない
 

普通のやけどは、直後から痛みを感じますが、化学熱傷の場合は、お口の組織が少しずつ破壊されているのに、しばらくの間痛みを感じないことも多くなります。

 

このため、深いところにまで進んでから初めて痛みが出て、気がつくということも珍しくありません。

熱傷の深さが分かりにくい

化学熱傷の特性:熱傷の深さが分かりにくい
 

普通のやけどの傷は、深さが明瞭に分かります。

 

ところが、化学熱傷の場合は、化学反応が目に見えないので、どこまでダメージを受けているのかが分かりにくいという怖さがあります。

長時間反応が続く

化学熱傷の特性:長時間反応が続く
 

普通のやけどの場合は、冷やせば原因の熱源がなくなるので、そこでやけどの進行は終わります。

 

しかし、化学熱傷の場合は、原因の化学物質を表面的に取り除いても、内部に入り込んだ化学物質が不活化されるまで化学反応を続けるので、熱傷も長時間にわたって続いてしまいます。

酸とアルカリでは差がある

化学熱傷の特性:酸とアルカリでは差がある

実は同じ化学物質でも、酸とアルカリではダメージに違いがあります。

 

酸の場合、化学熱傷を起こした組織表面が凝固して内部を守ってくれるので、内部に進行しにくいのですが、アルカリは組織を溶解してしまいます。このため、アルカリの方が生体の組織をより深く急速に侵食します。

お口のやけどの対処法

お口のやけどへの対処法はやけどの種類によって異なります。

熱傷の場合

軽度の熱傷なら、ご自身で十分対応できます。
 

軽度の熱傷なら、ご自身で十分対応できます。

①うがいをする

やけどの原因となる熱いものを冷ますためにも、お水でうがいをします。

②冷やす

氷水を含むなどして、患部を冷やしましょう。

③患部を清潔に保つ

患部をしっかりと冷やして清潔に保てば、普通のやけどは数日〜2週間程度で治ります。 痛みが強い場合は、アズレン系の軟膏を塗るのも良いでしょう。

 

ただし、痛みが激しく食事が摂れない場合や、症状がひどい場合は無理をせず歯科医院を受診してください。

化学熱傷の場合

化学熱傷が疑われる場合は、軽そうに思われても必ず医療機関を受診してください。
 

化学熱傷が疑われる場合は、軽そうに思われても必ず医療機関を受診してください。

①原因物質を除去

お口の中に原因となる化学物質が残っているのがわかったら、速やかに取り除くようにします。

②うがいをする

化学熱傷の治療の基本は、早期における大量の水による洗浄です。なお、牛乳には粘膜を保護する作用があるため、手元にある場合は水での洗浄と併せて活用しても良いでしょう。緩衝作用があり、粘膜を保護する効果も期待できます。

③医療機関を受診

ある程度洗浄したら、すぐに病院へ向かってください。受診の際は、「何を口に入れたか(成分表やパッケージ)」を持参すると適切な治療が受けられます。

お口のやけどの注意点

やけどの後の口の中は、傷ついてとてもデリケートな状態です。早く治すために、「やってはいけないこと」と「おすすめのケア」を知っておきましょう。

水ぶくれや皮むけはそのままに

お口のやけどの注意点:水ぶくれや皮むけはそのままに
 

お口のやけどを経験したことある方ならお分かりいただけると思いますが、皮膚のやけどと同じく、水ぶくれができます。

 

この水ぶくれは、できることなら剥がさないようにしましょう。無理に剥がすと傷口が露出し、痛みが強くなったり、細菌感染を起こして治りが遅くなったりするので、剥がさない方が治りが早くなるのです。

患部を触らない

お口のやけどの水ぶくれは、とても脆弱なので舌や指で触ると剥がれてしまいます。気になるかもしれませんが、できるだけ患部を触らないように心がけてください。

食事に気をつける

お口のやけどの注意点:食事に気をつける
 

酸っぱいものや辛いもの、酸っぱいもの、硬いものなど、傷を刺激するような食べ物はしばらく控えるようにしましょう。

 

冷ましたお粥やうどん、豆腐、プリンなど、柔らかくて刺激の少ないものがおすすめです。また、粘膜の再生を助けるビタミンB2・B6(卵、納豆、乳製品、レバーなど)を積極的に摂るのも有効です。

中和剤は使わない

お口のやけどの注意点:中和剤は使わない
 

薬品によるやけど(化学熱傷)の場合、自己判断で酢や重曹などを用いて中和しようとすることは避けてください。酸とアルカリが反応する際に中和熱という熱が発生し、中和熱によってやけどのダメージが深くなる恐れがあるためです。

 

また、すでに組織の内部に浸透してしまった成分まで中和することは困難です。あくまで大量の水で洗い流すことを優先してください。

無理に吐かせない

原因となる化学物質を飲み込んだかもしれないと思っても、無理に吐かせるのは避けてください。吐かせると、逆流した時に化学熱傷を起こしていないところに触れて、そこでも化学熱傷を起こしかねないからです。

病院に行くべき?受診の目安と診療科

病院に行くべき?受診の目安と診療科
 

歯科医院で診てもらうべきかどうかも、熱傷と化学熱傷では判断基準が異なります。

 

お口の中の傷は治りが早いものです。これはやけどの傷にも言えることで、お伝えしたとおり、熱傷の場合は、およそ1〜2週間で治ってきます。

 

ただし、それを過ぎても治らない場合や、それに満たない期間でも痛みが強すぎて飲食にも差し支えるようなら、歯科医院で診てもらうようにしましょう。

化学熱傷の場合はすぐに受診

化学熱傷はすぐに受診が必要です。特に高齢者や小さなお子さんがいらっしゃるご家庭は注意してください。

 

原因物質がはっきりしなくても、「乾燥剤の袋が破れていた」「子供が洗剤の近くで泣いている」など、疑わしい状況であれば、躊躇せず病院に行って診察を受けましょう。

 

受診先は、救急対応が可能な病院や歯科医院、口腔外科、耳鼻科、中毒110番(※)などに相談して指示を仰ぐのが賢明です。

 

(※)公益財団法人 日本中毒情報センター(JPIC)中毒110番

口の中のやけどは種類に合わせた正しい処置を

口の中のやけどは種類に合わせた正しい処置を
 

今回お伝えしたように、口の中のやけどには、熱いものが原因の熱傷と、化学物質による化学熱傷の2種類があります。

 

一般的な熱傷であれば、すぐに冷水でうがいをして冷やし、患部を清潔に保つことで、1〜2週間程度で回復しますが、化学熱傷の場合は、洗浄後、速やかに医療機関を受診する必要があります。

 

ポラリス歯科・矯正歯科は、通常の歯科治療に加え、患者さんの口腔環境をいつも健康に保てるよう、様々なサポートをご提供いたします。口腔内のやけどについても的確な対処を行うことができますので、お口のことでお困りの際は、札幌駅すぐのポラリス歯科・矯正歯科へお問い合わせください。