歯の治療全般
プロテイン習慣と口臭の関係

笹川スポーツ財団の発表によると、日本の筋トレ人口は1600万人以上になるとされ、多くの方が筋力アップやダイエットなど、健康づくりに取り組んでいらっしゃることがわかります。
そんな筋トレの際によく飲まれるのがプロテインです。富士経済グループの調査によれば、日本のプロテイン市場は2023年には1100億円を超え、さらなる成長が予想されています。
ただ、積極的に摂取されるようになったプロテインですが、
- プロテインを飲み始めてから口の中が臭う気がする…
- ダイエットのために糖質制限も始めたら家族に息のニオイを指摘された…
このようなお悩みを感じる方も増えてきています。
健康や理想の身体のために始めたプロテイン習慣が、口臭の原因になっているとしたら驚いてしまいすよね。しかし、それは気のせいではなく、タンパク質の代謝や口腔内環境の変化が関係している可能性があります。
今回は、プロテイン習慣と口臭の関係を医学的な視点から解説し、日常生活でできる予防や改善方法を紹介します。
口臭が発生するメカニズム
まずは口臭が発生する原因を見ていきましょう。
口腔内細菌によるタンパク質分解

口臭の最大の原因は、口腔内の細菌が、食べかすやタンパク質を分解する時に発生する臭いを放つガスによるものです。
舌の表面や歯茎の歯周ポケットに残ったタンパク質が細菌に分解されると、揮発性硫黄化合物(VSC)が生じます。これは硫化水素やメチルメルカプタンと呼ばれる強い臭気成分で、卵が腐ったような臭いとして感じることもあります。
プロテインの摂取が増えると、口腔内に残るタンパク質量も増えるため、VSCが発生しやすくなります。
(※)口臭の種類や原因物質について詳しく知りたい方は、提携医院である町田歯科の詳しく知ろう!口臭の種類、原因と対策のコラムもご参照ください。
腸内での腐敗発酵とガスの発生

胃腸の消化能力を超えてタンパク質を摂取すると、未消化のまま大腸へと送られます。これが腸内で腐敗発酵を起こし、アンモニアや硫化水素などのガスを発生させます。
そのガスは血液に乗って全身を巡り、肺から呼気として排出されることで、体の中から発するような口臭の原因となります。
唾液不足による臭いの滞留

激しいトレーニング後は、発汗によって体が水分不足に陥りがちです。体内の水分が減ると、唾液の分泌量も減少します。
唾液には、お口の中の細菌や食べかすを洗い流し、細菌の活動を抑制する自浄作用があります。この唾液が減ってしまうと、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなり、結果として口臭が強くなってしまうのです。
プロテイン(高タンパク食)で起こる口臭の種類
プロテインなどの高タンパク食をきっかけに起こりうる口臭には、主に3つのタイプがあります。
硫黄臭(揮発性硫黄化合物によるもの)

「卵が腐ったような」「生ゴミのような」と表現される、ツンとした刺激のある臭いです。これは、上述の口臭の代表的な原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)によるものです。
お伝えしたように、お口の中の細菌が、食べかすや剥がれ落ちた粘膜に含まれるタンパク質を分解する際にガスを発生させます。プロテインはタンパク質の塊ですから、お口の中にプロテインが残留すると硫黄臭を強くする原因になります。
ケトン臭(糖質制限を併用した場合)

高タンパク食と同時に糖質制限を行っている方に多いのが、甘酸っぱい独特な臭いのケトン臭です。ダイエット臭とも呼ばれ、厳しく糖質の制限を行っている方に現れやすい特徴があります。
体内の糖質が枯渇すると、私たちの体は脂肪を分解してケトン体というエネルギー源を作り出します。このケトン体の一部が血液を介して肺に運ばれ、呼気として排出されることで特有の臭いを発するのです。
消化不良による胃由来の臭い

消化不良の際に生じるのは、腐敗したような、酸っぱい臭いになります。
一度に大量のプロテインを摂取すると、胃腸での消化が追いつかなくなり、この未消化のタンパク質が腸内で異常発酵を起こし、発生したガスが血液中に吸収されて、呼気として口から出てくることにより、口臭が生じます。
プロテイン摂取時に気をつけたいポイント
プロテインの摂取が口臭の原因になり得ることを説明してきましたが、プロテインを一切摂ってはいけないわけではありません。摂取の際に注意すべきポイントがあります。
摂取量とタイミングの調整

体が一度に吸収できるタンパク質の量には限りがあり、一般的に20〜30g程度とされています。
規定量を超えて過剰に摂取すると、上でお伝えしたように、消化不良や腸内環境の悪化を招き、口臭の原因になってしまいます。また、就寝直前に大量摂取すると、消化活動が追いつかず、胃腸に負担がかかるため、注意が必要です。
プロテインを摂る際は、ご自身の体重や運動量に合わせた適量を、数回に分けて摂取することを心がけましょう。
十分な水分補給を心がける

タンパク質の代謝には多くの水分が必要です。水分が不足すると、消化吸収の効率が落ちるだけでなく、唾液の分泌も減ってしまいます。
トレーニング中はもちろん、プロテインを飲む際は、いつもより多めの水分を一緒に摂るように意識してください。
糖質とのバランスを取る食べ方

極端な糖質制限は、ケトン臭の原因となります。トレーニングのエネルギー源としても糖質は重要です。
プロテインと一緒に、バナナやおにぎり、オートミールといった良質な糖質を適量摂ることで、ケトン体の過剰な産生を抑えることができます。
口臭の予防・改善方法
口臭の悩みは、お口のケアや食生活への注意を心がけることでも改善につながります。
舌ブラシや歯間ブラシ・デンタルフロスを取り入れる

口臭の原因の多くは、舌の表面に付着した舌苔(ぜったい:舌に付着する白っぽい汚れ)や、歯と歯の間に残った食べかすから発生します。
歯ブラシだけでは除去しきれない汚れもあるため、舌ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを日常的に使用するのが効果的です。
特にプロテインを摂取した後は、粉末やタンパク質の残留が舌や歯間に残りやすいため、こまめなケアを心がけましょう。
食後の口腔ケアと水分補給

プロテインを飲んだ後や食後は、できるだけ早く歯磨きやうがいをするのが理想です。難しい場合は、水で口を数回すすぐだけでも、お口の中に残ったタンパク質を洗い流す効果が期待できます。
加えて、きちんと水分補給をすることで、お口の潤いを保つことも忘れないようにしましょう。
消化を助ける食材(野菜・酵素)の活用

口臭を根本的に防ぐためには、胃腸の働きを整えることも欠かせません。タンパク質の消化を助けるには、野菜や発酵食品に含まれる酵素を組み合わせるのがおすすめです。
例えば、生野菜やパイナップル、納豆やヨーグルトなどを一緒に摂ることで、消化がスムーズになります。また、食物繊維をしっかり摂ることで腸内環境が整い、臭いの原因となる悪玉菌の増殖を抑えることができますから、プロテインだけでなく、これらの食材を積極的に摂取するようにしてください。
栄養管理と口腔ケアをセットで行うようにするのが効果的

お伝えしたように、プロテイン(高タンパク食)由来の口臭は、プロテインの摂取量やタイミングの調整、十分な水分補給、そして舌ブラシや歯間ブラシを使った丁寧な口腔ケアを行うことで予防・改善ができます。
ポイントになるのは、栄養管理と口腔ケアをセットで考えることです。プロテインは健康的な体づくりの強い味方でもありますから、口臭のリスクをきちんと理解し、適切な口腔ケアを取り入れつつ、正しいプロテイン習慣を続けるのが大切と言えるでしょう。
もし、セルフケアを続けても口臭が改善しない、あるいは根本的な原因を知りたいと感じる場合は、歯科医師へ相談することも一つの方法です。
ポラリス歯科・矯正歯科では、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、確かな知見に基づいた、お口を健康に保つためのアドバイスも行っています。「プロテインを摂るようになってからなんとなくお口の調子が悪い」「口臭が気になる」といったデリケートなお悩みも、どうぞお気軽に札幌駅すぐそばのポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。