お酒と虫歯の関係

お酒と虫歯の関係
 

よく冗談で「お酒はアルコール消毒しているのと同じだから虫歯にならない!」「アルコールで虫歯菌を殺菌している!」などとおっしゃる方はいませんか?(笑)

 

もちろんこれは冗談であれば問題ありません。しかし、お酒を飲んでいると虫歯にならないと、真に受けてしまうのは大きな間違いです。

 

特に年末年始は忘年会・新年会があったり、帰省や旅行も増える時期ですから、飲酒の機会も多くなるでしょう。そこで今回は、アルコールと虫歯の関係を整理し、お酒を飲む時に何に気をつけたら良いのか、きちんと歯科の目線で解説したいと思います。

アルコールと虫歯の関係

まず、知っておいていただきたいのは、「アルコール自体に虫歯のリスクがあるわけではない」ということです。

 

虫歯治療のページでお伝えしているように、ミュータンス菌などの虫歯菌は、糖質があると増殖し、糖分を酸に変えて歯を溶かします。いわば糖分が虫歯菌の『エサ』と言えるでしょう。しかし、アルコールは虫歯菌のエサにはならないのです。

お酒は虫歯の原因にならない?それは違います

お酒は虫歯の原因にならない?それは違います
 

では、アルコールを含むお酒ならば虫歯にならないのでは?…残念ながらそれは違います。冒頭でお伝えした冗談のように、飲酒によってアルコール消毒されるなどということもありません(笑)

 

そもそも、消毒・殺菌に用いられるアルコール濃度は60%以上です。それに対し、アルコール度数の高いブランデーの濃度は40%程度、ビールに至っては5%程度です。

 

中にはスピリタスというアルコール濃度96%というお酒もあるとはいえ、日本で日常的に飲まれるお酒には、消毒・殺菌効果はないに等しいのです。

飲酒によって虫歯菌が増えることに

飲酒によって虫歯菌が増えることに
 

ビールやワイン、日本酒などの醸造酒には、虫歯菌のエネルギー源となる糖分が多く含まれています。そのため、虫歯のリスクが高くなるのです。

 

では、糖分を含まない焼酎、ウイスキー、ブランデーなどの蒸留酒はどうでしょう。たしかに蒸留酒は糖分を含まないため、虫歯のリスクは醸造酒よりも抑えられます。

 

しかし、飲酒の際にはおつまみを食べる方がほとんどではないでしょうか?当然、おつまみに糖分が含まれていると、虫歯菌の栄養源となるため、虫歯リスクを引き上げる要因となります。

 

つまり「アルコール自体では虫歯リスクは上がらないものの、飲酒による虫歯リスクは高い」と言うことができます。

飲酒による虫歯のリスクとは?

上で、飲酒による虫歯リスクは高いとお伝えしましたが、お酒を飲む時、何が虫歯のリスクとなるのでしょうか。より具体的にお伝えしましょう。

お酒に含まれる糖分

前述のとおり、蒸留酒には糖分はほとんど含まれませんが、醸造酒には糖分が多く含まれます。100mlあたりの糖質の例を挙げると、

醸造酒

醸造酒には糖分が多く含まれます
  • ビール:3.1g
  • 白ワイン:2.0g
  • 日本酒:4.9g
  • 梅酒:21g

蒸留酒

蒸留酒は糖分を含まない
  • ウイスキー:0g
  • 焼酎:0g

以上のようになります。もちろん、お酒によっても異なりますが、種類によって糖分の量が様々であることがお分かりいただけるかと思います。

だらだら飲み・だらだら食べ

お酒やおつまみに含まれる糖分が、長時間にわたってお口の中にあることになり、虫歯リスクをさらに上げてしまう
 

お酒は、時間をかけて飲むことが多くなりがちです。そのため、お酒やおつまみに含まれる糖分が、長時間にわたってお口の中にある状態になり、虫歯リスクをさらに上げることにつながります。

 

また、おつまみとして、チョコレートやヌガー、ビスケットなど、歯にくっつきやすいものは、特に要注意です。

脱水による唾液量の減少

アルコールによって脱水状態になり、体内の水分量が減少すると、唾液の分泌量も低下し、虫歯になりやすい環境を作ってしまう
 

アルコールには利尿作用があります。お酒をたくさん飲んでも、水分はどんどん体外へ排出されていきます。特にビールは、1リットルのビールを飲むと、1.1リットルの水を失うほど利尿作用が強いのです。

 

また、アルコールを体内で分解する際には、水を必要としますから、いっそう脱水状態になりやすくなります。

 

このように体内の水分量が減少すると、唾液の分泌量も低下します。唾液の量が少なくなることによって、口腔内の自浄作用が低下したり、歯の再石灰化も滞り、虫歯になりやすい環境を作ってしまうのです。

歯磨きを忘れる、適当になる

飲酒によって歯磨きを忘れる、適当になる
 

お酒を飲むと、眠たくなってしまいがちですね。帰宅後、ついつい歯磨きをしないでそのまま寝てしまう…そんな方も多いのではないでしょうか?

 

晩酌や寝酒も、歯磨きを忘れてしまいやすいので要注意です。飲食後の歯磨きを怠ってしまうのは、口腔内の健康を保つためには一番良くありません。

 

とはいえ、飲酒後も忘れず歯磨きする方もいらっしゃるでしょう。それは大変良いことなのですが、酔っている時の歯磨きは、いつもより不正確になりやすいのも事実です。

 

もちろん磨かずに寝てしまうのと、いつもより軽くであっても、歯磨きをして就寝するのでは、天地ほどの差がありますので、頑張って歯磨きをするように心掛けてください。

お酒を飲む時に気をつけたいこと

飲酒による虫歯のリスクについてお話ししましたが、「お酒を一切飲んではいけない」ということではありません。以降では、お酒を飲む際に、できるだけ虫歯のリスクを上げないための注意点について、お伝えしていきましょう。

だらだら飲みはなるべく避ける

お酒をだらだら飲み続けてしまうことが、虫歯リスクを上げる一番の原因です。特に自宅で飲む時などは、時間を決めてだらだら飲まないように気をつけましょう。

虫歯になりにくいお酒やおつまみを選ぶ

虫歯になりにくいお酒,ウイスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ、泡盛など
 

虫歯になりにくいという観点からすると、飲むのであれば糖分を含まない蒸留酒が良いでしょう。もちろん体質もありますので、飲めない種類のお酒を無理に選ばなくても構いませんが、具体的には、ウイスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ、泡盛などです。

 

また、おつまみの種類にも気をつけてみましょう。虫歯になりにくいおつまみとしては、以下のようなものがあります。

するめ

よく噛むことによって、唾液が出やすくなります。

小魚

虫歯になりにくいおつまみ,小魚,タンパク質とマグネシウムを多く含むナッツ類と一緒に食べるのがおすすめ
 

スルメと同じように、よく噛むことで唾液の分泌を促します。また、カルシウムを多く含むので、丈夫な歯を作るのにも役立ってくれます。

 

カルシウムは、タンパク質やマグネシウムと一緒に食べることで吸収が良くなりますので、タンパク質とマグネシウムを多く含むナッツ類と一緒に食べることをおすすめします。ナッツと小魚がパックになっているものなどは、手軽で良いですね。

チーズ

チーズもカルシウム、リン酸、ミネラルを多く含むので、虫歯になりにくいおつまみです
 

カルシウム、リン酸、ミネラルを多く含むので、歯の表面を丈夫にするのに役立ってくれます(再石灰化の促進)。ただ、チーズは歯の溝や、歯の間に入り込みやすい点には注意してください。選ぶなら、水分量が少ないハードチーズが良いでしょう。

 

また、これらの食材は、虫歯予防の観点から、お子さんのおやつとしてもおすすめと言えます。

水分摂取を忘れずに

お酒を飲む時は一緒に水分を摂る
 

お酒を飲む時は一緒に水分を摂るようにしましょう。水分は、一度に大量に飲んでも吸収されませんので、お酒と一緒に少しずつ、そして回数を多く飲むようにしましょう。

 

また、飲酒の後はどうしても水分が不足気味になりますので、寝る前にも水分補給をしてください。

飲酒の後は必ず歯磨きを

飲酒の後は必ず歯磨きを
 

お酒を飲んだ後は、寝る前に必ず歯磨きをするようにしましょう。翌朝は、昨夜の磨き残しを除去するためにも、いつもより念入りに歯磨きをするように心掛けてください。

お酒を飲む時は、注意点を守って虫歯リスクを上げないように

今回は、お酒と虫歯の関係についてお話ししました。飲酒による虫歯リスクの要因や、注意すべきポイントについて、ご理解いただけましたでしょうか。

 
お酒を飲む時は、注意点を守って虫歯リスクを上げないように
 

冒頭でも触れたとおり、年末年始などのお休みの時期は、飲酒の機会も増えるものです。飲酒は虫歯のリスク要因になりますが、お酒やおつまみの種類に注意したり、水分補給に加え、何よりも歯磨きを忘れないようにすることで、虫歯になるリスクは下げることができます。

 

ご親戚や気の合う友人とのお酒の席は、ついつい盛り上がることも多いと思いますが、虫歯のリスクもきちんと理解したうえで、お酒を楽しむようにしていただけたらと思います。