日常生活に影響が出ることも…大切な歯の噛み合わせ

日常生活に影響が出ることも…大切な歯の噛み合わせ

噛み合わせと認知症

先日、噛み合わせを治すと認知症の原因物質が減少したというニュースがテレビで流れていました。歯の噛み合わせが脳にも影響すると言うと、驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。もちろんこれにはちゃんとした理由があります。

 

噛み合わせが悪いと、歯と歯の当たりが強すぎてしまい、歯にひびが入り、割れやすくなります。そして処置をしなければ、大切な歯を失うことになりかねません。すると、嚥下(えんげ:食べ物や飲み物を飲み込むこと)機能が低下したり、発声が難しくなるなど、いわゆるオーラルフレイル(加齢に伴う口腔機能の衰え)にもつながってしまいます。

 
オーラルフレイル(加齢に伴う口腔機能の衰え),歯の本数が少なくなると、咀嚼による脳への刺激も減少し、記憶をつかさどる海馬や、思考に重要な前頭葉の機能が損なわれ、これが延いては認知症の原因に
 

また、歯の本数が少なくなると、咀嚼による脳への刺激も減少し、記憶をつかさどる海馬や、思考に重要な前頭葉の機能が損なわれ、これが延いては認知症の原因の一つにもなるのです。8020(ハチマルニイマル)運動のコラムでもお伝えしましたが、高齢になっても自分の歯が残っていて、きちんと噛めることは、とても重要なことだと言えるでしょう。

 

もちろん高齢の方に限らず、歯が健康で正常な噛み合わせを維持できていることは、どの年代の方にとっても大切です。噛み合わせが正しくないと、日常生活にも様々な影響が出てきますので、しっかりと確認する習慣をつけましょう。

噛み合わせの確認

では早速、噛み合わせが正常かどうかを確認する方法についてお話ししていきましょう。自宅でできる簡易的なものと、歯科医院で行う、より専門的な診断があります。

自宅でできる噛み合わせの確認

自宅でできる噛み合わせの確認

唇を合わせた時の状態

口を結んで上顎と下顎の唇を合わせてみましょう。唇の間から歯が見えてしまう、唇が閉じない、下唇を上顎の前歯で噛んでしまう、上唇が下唇で見えないなどの時は、噛み合わせに注意が必要です。

「イ」と発音した時の歯並びの状態

「イ」と発音して、奥歯までしっかりと噛みます。その状態で唇を自分の指で広げ、歯並びを見てみます。そして上下の歯の隙間や、下顎の歯並びが上顎の歯並びの外側に出ていないか確認してください。上顎下顎の歯の隙間に舌が見えていたら要注意です。

割り箸を使っての確認

ご家庭にある割り箸で確認することもできます。割り箸を前歯で横に噛みます。その時、割り箸が水平なら大丈夫です。割り箸が斜めなら、噛み合わせが悪い可能性があります。

Eラインでの確認

Eラインでの嚙み合わせの確認
 

鏡で横顔を見て確認する方法もあります。鉛筆などを用意し、ご自身の鼻の先から下顎に当てると、直線のラインができます。これをEラインといいます。Eライン上に唇が位置しているか、少し内側なら理想的です。鏡では判別しづらければ、写真を撮って確認してみましょう。

歯科医院での噛み合わせの診断

歯科医院ではより専門的な検査を行うことで、総合的な噛み合わせの診断ができます。

歯の模型を製作

歯の模型を製作しての嚙み合わせの確認
 

上顎下顎の歯型を取って石膏にし、お口の状態をきちんと可視化します。こうすることで、噛み合わせの状態、歯の擦り減り具合、歯の位置の異常に加え、歯槽骨の大きさ、さらに虫歯や、合っていない詰め物・被せ物があるかどうかも確認できます。

骨隆起(こつりゅうき)の有無

歯肉を触診し、出っ張った硬い部分がある時は、骨が大きくなった骨隆起(こつりゅうき)の可能性があります。骨隆起とは、骨が外側に向かって増殖したもので、外骨症(がいこつしょう)とも呼ばれます。噛み合わせに異常があると、この骨隆起ができることがあります。

咬合紙(こうごうし)

上顎下顎の噛み合わせのバランスを咬合紙(こうごうし)で確認します。皆さんも、歯科医院で紙やフィルムのようなもの歯にはさみ、「カチカチと噛んでみてください」「(歯ぎしりのように)歯を横に動かしてみてください」と言われたことはありませんか?それが咬合紙です。赤色や青色のものがあります。

 
咬合紙(こうごうし)を利用しての嚙み合わせの確認
 

咬合紙は強く噛み合わせると色が付くため、歯を上下左右に動かすことで、噛み合わせの状態が正常かどうかを確認できます。どの歯もまんべんなく噛み合っていれば良いのですが、特定の歯だけが当たっている状態は、そこにずれが生じているということなので、噛み合わせの問題が起こりやすくなります。

専用機材や専用設備

歯科医院の専用機材や専用設備による噛み合わせの調整
 

当然のことかもしれませんが、歯科医院であれば専用の医療機器や設備があります。歯の角度や位置が悪ければ、噛み合わせの問題を引き起こしますが、それはご自身では見つけづらく、歯科医師や歯科衛生士に確認してもらうのが一番です。専門家による治療も受けられるので、やはり確実な検査のためには、歯科医院を受診するのが良いでしょう。

まだまだある?噛み合わせが引き起こすトラブル

冒頭では、噛み合わせと認知症についてお話ししましたが、噛み合わせが良くないと、それ以外にも様々なトラブルを引き起こします。

睡眠障害

睡眠障害
 

睡眠時の噛み合わせに問題があると、眠りが浅くなり、睡眠障害が起こりやすくなります。睡眠障害もまた、認知症を誘発します。

 

やはり、日頃の睡眠の質を向上させることが大切です。睡眠時の枕の高さを合わせ、首の位置を正しい位置に保つことで、舌も正しい位置に定まり、噛み合わせもずれにくくなります。枕を選ぶ際は、首の高さに合ったものを選ぶようにしてください。

首・肩・頬の張り

首・肩・頬の張り
 

デスクワークが多い方もいらっしゃると思いますが、無理な姿勢で仕事を続けると、全身、特に首・肩・頬の筋肉に張りやすく、噛み合わせもずれやすくなります。パソコンなどで同じ姿勢を続ける際は、姿勢には注意しましょう。デスクの高さや椅子の位置を工夫するのもおすすめです。

飲酒にも注意

飲酒にも注意
 

お酒と虫歯の関係のコラムでもご説明しましたが、お酒が好きな人は晩酌時に注意が必要です。飲酒後の就寝では、アルコールによって力が入りにくくなり、全身の筋肉が緩みます。すると顎の筋肉も緩むため、正しい位置で噛み合わせることが難しくなります。お酒を楽しむのは悪いことではありませんが、噛み合わせが気になる方は、飲み過ぎは控えるように心がけてください。

正しい噛み合わせの大切さ

正しい噛み合わせの大切さ
 

今回は、噛み合わせの確認方法や、嚙み合わせが良くないことで起こる不調についてお話ししました。歯の噛み合わせは、健康上、とても大切なことであるとご理解いただけたのではないでしょうか。

 

実際の治療には、噛み合わせを正常にするためのマウスピース(スプリント)を装着するスプリント治療、噛む力をコントロールするための認知行動療法のほか、歯並びを理想的な状態に直す矯正治療などがあります。もちろん毎日の歯磨きや食生活にも気をつけてください。

 

噛み合わせが原因で、歯ぎしり顎関節症に悩む方も多くいらっしゃいます。ご自身の噛み合わせについて不安を感じる方や、ご質問がある方は、お口のトータルケアが行えるポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にお問い合わせください。