ポーセレン・ラミネートベニアについて

ポーセレン・ラミネートベニアについて
 

歯をきれいに見せたいと思った時、まず気になるのは、やはり前歯の印象ではないでしょうか。たしかに、奥歯は口を大きく開かなければ見えませんが、歯並びの先頭にある前歯は、微笑んだり、喋ったりするだけでも見えるので、目が行きやすいと言えるでしょう。

 

「前歯の色や形をきれいにしたい」とお考えの方への治療法はいくつかあります。詰め物・被せ物のページでも多くの歯科材料をご紹介していますし、コラムでもお伝えしたセラミッククラウンも候補に挙がります。

 

様々な素材がありますが、今回はポーセレン・ラミネートベニアによる治療をご紹介したいと思います。ポーセレン・ラミネートべニアもセラミック素材を使った治療なのですが、比較的メジャーなセラミッククラウンとは違い、初めてお聞きになる方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

前歯の色合いや形を整えるならば、ポーセレン・ラミネートベニアもおすすめの治療法の一つです。今回のコラムでは、そんなポーセレン・ラミネートべニアについて詳しく解説しましょう。

ポーセレン・ラミネートベニアって?

ポーセレン・ラミネートベニア(PLV)は、歯の表面にセラミックで作られた薄いカバー(シェルといいます)を接着する治療法です
 

ポーセレン・ラミネートベニア(PLV)は、歯の表面にセラミックで作られた薄いカバー(シェルといいます)を接着する治療法です。このセラミックのカバーの色や形を整えることで、自然で違和感のない前歯にすることができます。

 

歯の治療ではありませんが、このように、歯の表面に薄いカバーを取り付ける方法は以前から行われており、1900年代前半にアメリカの映画撮影で用いられたのが起源と言われています。

 

その後、時を経てレジン(プラスチック素材)を歯に貼り付ける治療法が出てきます。しかし、コンポジットレジンのコラムでもお伝えしたように、レジンは光沢感に乏しく、変色したり、歯垢が付きやすいといった問題があるため、より優れた素材であるセラミック(ポーセレン)を用いた治療法が考えられたのです。

ポーセレン・ラミネートべニアの装着方法は?

歯の構造

上図のように、歯は内部にある象牙質を、骨よりも硬いエナメル質で覆って保護する形になっています。

 
ポーセレン・ラミネートべニア装着方法
 

ポーセレン・ラミネートベニアは、歯の外層であるエナメル質を0.5mmほど削り、オーダーメイドのセラミックのカバー(シェル)を、専用の接着剤を使って貼り付けます。また、ポーセレン・ラミネートベニアは前歯の唇面(表側)だけを対象とした治療法です。

ポーセレン・ラミネートベニアのメリット

ポーセレン・ラミネートベニアには多くのメリットがあります。以下で具体的に挙げていきましょう。

歯の色をきれいに合わせられる

ポーセレン・ラミネートべニアは歯の色をきれいに合わせられ、本物の歯と同じような光沢感や透明感のある色になる
 

ポーセレン・ラミネートベニアによる治療では、ご自身の希望に合わせた歯の色を選ぶことができます。そして材質がセラミックのため、本物の歯と同じような光沢感や透明感のある色になるのもメリットです。

 

元の歯の色が透けることもないので、強く変色した歯であっても、自然で違和感のない、美しい仕上がりが得られます。

歯をほとんど削らない

ポーセレン・ラミネートべニアは歯をほとんど削らない
 

上述のとおり、ポーセレン・ラミネートベニアは前歯の表側だけに装着します。そして接着力を強くするため、表面にエナメル質を残すように削ることがポイントです。

 

つまり、歯の表面をほんのわずかしか削らないのです。他の被せ物では、患者さんの歯の状態によって、歯を多く削らなくてはならないケースもありますが、このように歯をほとんど削らないのは、ポーセレン・ラミネートベニアの大きな特長と言えるでしょう。

 

また、歯をわずかしか削らないため、歯がしみたり、痛くなることがほとんどないというのもポーセレン・ラミネートベニアのメリットです。

治療期間が短い

ポーセレン・ラミネートべニアは治療期間が短い
 

歯を美しく白くする治療法としては、ポーセレン・ラミネートベニアの他に、ホワイトニング(歯の漂白)を想起される方もいらっしゃるかと思います。

 

ただ、ホワイトニングの基礎知識のコラムでもお伝えしたとおり、ホワイトニングは、希望の色になるまで、複数回にわたってホワイトニング剤を作用させなければなりません。

 

ポーセレン・ラミネートベニアの場合は、患者さんの歯型を取り、歯の形に合ったシェルを貼り付ければ治療が終了しますので、治療期間は大変短くなります。

虫歯になりにくい

お伝えしたように、ポーセレン・ラミネートベニアはエナメル質を残すように削ります。硬いエナメル質が残されるので、虫歯になるリスクも低く抑えられます。

耐久性が高く、長持ちする

ポーセレンラミネートべニアは耐久性が高く、長持ちする
 

セラミックは耐久性の高い歯科材料として知られており、作った当初の色合いを、長期にわたって保つことができるのが特長です。

 

ポーセレン・ラミネートベニアも同様で、時間が経っても変色しませんし、ホワイトニングのように後戻りを起こすこともありません。

歯の形も調整できる

ポーセレンラミネートべニアは歯の形も調整できる
 

ポーセレン・ラミネートベニアは、歯にセラミックのカバーを接着する治療法なので、元の歯の上に、望ましい形状をしたシェルを貼り付けることもできます。

 

例えば、歯の形がとても小さい矮小歯(わいしょうし)という歯の奇形がありますが、ポーセレン・ラミネートベニアならば、矮小歯も違和感のない大きさ、自然な形に整えることができます。

ポーセレン・ラミネートベニアのデメリット

ここまでポーセレン・ラミネートベニアのメリットを挙げてきましたが、もちろん良いことばかりではありません。デメリットもきちんとお伝えしましょう。

歯が噛み合う箇所には使えない

ポーセレンラミネートべニアは歯が噛み合う箇所には使えない
 

セラミックは、硬さは十分にありますが、割れてしまうというデメリットもある歯科材料です。ポーセレン・ラミネートベニアに使うセラミックのカバーは薄いため、セラミッククラウンに使うもの以上に、割れたり欠けたりする可能性があります。

 

このため、奥歯のように歯が噛み合う箇所はもちろんですが、前歯の先端部分を覆うことも難しく、使用できるのは、基本的に前歯の表側だけに限られます。

歯の向きを整えることはできない

同じセラミック材料を使った治療法であるセラミッククラウンなら、歯の向きが悪かったり、歯の位置が少しずれていたりしても、比較的きれいに治せます。

 

しかしポーセレン・ラミネートベニアは、上述のように噛み合わせの点から使えないこともありますし、歯の向きをきれいに整えるために使うことはできません。

硬い物を噛む時は注意が必要

ポーセレンラミネートべニアは、硬い物を噛む時は注意が必要
 

お伝えしたとおり、ポーセレン・ラミネートベニアはあくまでも薄いセラミックですので、硬い物を噛んだ時などに剥がれたり、欠けたりする可能性があるため、注意が必要です。

虫歯が大きいと使えない

虫歯治療のページで解説していますが、虫歯とは、ミュータンス菌が作り出す酸により、歯が溶かされていく病気です。下図のように虫歯が大きくなると、歯の表面を覆うエナメル質がなくなり、内部の象牙質が露出します。

虫歯が大きいと、ポーセレン・ラミネートべニアは使えない

冒頭でお話ししたように、ポーセレン・ラミネートベニアは、歯のエナメル質に貼り付ける必要があり、その際は高い接着力が欠かせません。虫歯が進み、象牙質まで進行した場合は、エナメル質が損傷し、接着力も保てないことから、ポーセレン・ラミネートベニアは適応外となります。

保険診療の適用外

ポーセレン・ラミネートベニアは保険診療の対象外の治療法です。自費診療となるため、一般的な保険診療と比べると、やはり治療費は高額になります。

前歯をきれいに見せるなら、ポーセレン・ラミネートべニアも有力な選択肢に

前歯をきれいに見せるなら、ポーセレン・ラミネートべニアも有力な選択肢に
 

今回は、ポーセレン・ラミネートベニアについてお話ししました。セラミッククラウンほどメジャーではないかもしれませんが、今回のコラムでポーセレン・ラミネートべニアの特性や、装着方法などをご理解いただけたかと思います。

 

ポーセレン・ラミネートベニアは、主に前歯部の歯の色や形を整えることを目的とした、審美歯科治療です。歯をほとんど削らないため、歯への負担が少なく、しかも耐久性に優れ、自然で違和感のない仕上がりが期待できます。

 

そのため、前歯が比較的健康な状態を保っていれば、「歯を白くきれいに見せたい」というニーズに応えてくれる治療法の一つと言えるでしょう。もしポーセレン・ラミネートベニアにご興味をお持ちになった方は、ポラリス歯科・矯正歯科にぜひご相談ください。